株式会社KDDI総合研究所 このページを印刷する

2022 IEEE Photonics Technology Letters Best Paper Awardを受賞

~敷設済み光ファイバーの潜在的な伝送容量をさらに引き出す技術を開発~

2022年11月21日
University College London
Xtera
株式会社KDDI総合研究所

University College London(UCL)(英)の研究グループTRANSNET(注1)、Xtera(英&米)、KDDI総合研究所が共同でIEEE Photonics Technology Lettersに投稿した超広帯域大容量光ファイバー伝送技術に関する論文「Optical Fibre Capacity Optimisation via Continuous Bandwidth Amplification and Geometric Shaping」(IEEE Photonics Technology Letters, vol. 32, no. 17, pp. 1021-1024, September 2020.)が、2022年のIEEE Photonics Technology Letters Best Paper Award(注2)を受賞しました。

 

本論文は、S+C+L帯(注3)にわたる連続した16.83 THzという超広帯域を用いた大容量伝送実験を先駆的に実施したものです。標準ファイバーの伝送容量としては当時(2020年9月)最大となる178.08 Tb/sが達成可能であることを示した点が評価され、今回の受賞となりました。

 

これまで、大容量な光ファイバー伝送システムではC帯(波長:約1530-1565 nm)が広く用いられてきましたが、さらに伝送容量を増やすためにC帯に加えてL帯(波長:約1570-1610 nm)を用いた伝送システムが開発されました。本論文における実験では、C+L帯にさらにS帯(波長:約1485−1520 nm)を加え、ラマン増幅技術の導入によって各帯域間の隙間(波長幅:約5-10 nm)を無くすとともにL帯の動作波長を約1620 nmまで拡張することによって、約23%も帯域を拡大することに成功しました。さらに、ジオメトリック・コンステレーション整形(注4)と呼ばれる最新の技術を導入し、帯域や波長により異なるチャンネル品質に合わせて伝送可能な情報量を最大化することで、これまでは活用が難しかった既存光ファイバーの未使用だった帯域を最大限活用できる可能性を示しました。本技術は、敷設済みの光ファイバーの潜在的な伝送容量をさらに引き出す技術として、活用が期待されています。

 

本論文における実験は、筆頭著者であるUCLにおいて実施しました。KDDI総合研究所はデジタル信号処理を担当し、ジオメトリック・コンステレーション整形によってチャンネルごとに最適化された光信号を高い品質で変復調することに成功するとともに、伝送容量を最大化することに貢献しました。

 

2022年11月13日~17日にカナダ・バンクーバーで開催されるIEEE Photonics SocietyのフラグシップカンファレンスであるIEEE Photonics Conferenceにて本賞の授与が行われました。

 

KDDIとKDDI総合研究所は、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定し、その具体化に向け、イノベーションを生むためのエコシステムの醸成に必要と考えられる「将来像」と「テクノロジー」の両面についてBeyond 5G/6Gホワイトペーパーにまとめました。両社は新たなライフスタイルの実現を目指し、7つのテクノロジーと、それらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進します。
今回の成果は7つのテクノロジーの中の「ネットワーク」に該当します。

 

 

参考1:IEEE Photonics Technology Letters Best Paper Awardに関する詳しい情報は こちら

 

参考2:詳しい論文内容は こちら
論文タイトル:Optical Fibre Capacity Optimisation via Continuous Bandwidth Amplification and Geometric Shaping
著者:Lidia Galdino(UCL), Adrian Edwards(Xtera), Wenting Yi(UCL), Eric Sillekens(UCL), 若山雄太(KDDI総合研究所), Thomas Gerard(UCL), Wayne Sheldon Pelouch(Xtera), Stuart Barnes(Xtera), 釣谷剛宏(KDDI総合研究所), Robert I. Killey(UCL), Domanic Lavery(UCL), and Polina Bayvel(UCL)

 

 

 

(注1)TRANSNETは、University College London(UCL)を中心としたAston UniversityならびにUniversity of Cambridgeとの共同研究プロジェクトを推進する研究グループで、次世代デジタル通信インフラへのトランスフォーメーションに必要な技術創出を研究テーマとしています。
 関連記事 2022年11月4日発表
TRANSNET members win 2022 IEEE PLT Best Paper Award

 

(注2)過去3年間に同誌に掲載された論文の中から、「新規性」、「技術内容」、「重要性」、ならびに「プレゼンテーション」において優れた論文の著者に授与される賞で、約1200編の採録論文のうち上位2編が受賞。

 

(注3)国際電気通信連合電気通信標準化部門ITU-Tでは、補足文書 G.Sup39(Optical system design and engineering considerations)において各波長帯域の幅をそれぞれS帯(波長:1460-1530 nm)、C帯(波長:1530-1565 nm)、L帯(波長:1565-1625 nm)と定義しています。光ファイバー伝送システムで実際に活用できる帯域は、光源や光増幅器などの光デバイスの動作波長によって制限されます。

 

(注4)機械学習などを活用し、伝送誤りが少なくなるように信号点配置(光信号の振幅と位相)を選ぶ技術
 関連トピックス 2021年6月29日発表
2048QAM超多値変調での光ファイバー伝送に成功

 

 

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。