
液晶反射板でミリ波を反射させ、屋外ビル間をエリア化する実証に成功
~可搬型・低消費電力・太陽光駆動、イベントの臨時対策などでの活用を目指す~
2025年2月28日
KDDI株式会社
株式会社KDDI総合研究所
株式会社ジャパンディスプレイ
KDDI株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 CEO:髙橋 誠、以下 KDDI)、株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下 KDDI総合研究所)、株式会社ジャパンディスプレイ(本社:東京都港区、代表執行役会長 CEO 兼 取締役:スコット・キャロン、以下 JDI)は、電波の反射方向・範囲を変更できる可搬型のミリ波(28GHz帯)用液晶メタサーフェス反射板(以下 液晶反射板)を開発し、ミリ波の電波が届きにくい屋外のビル間に電波を反射させてエリア化する実証を2025年2月25日に成功しました(以下 本実証)。また、低消費電力という特徴を活かし、汎用品の太陽光パネルとバッテリーで、液晶反射板が駆動することも確認しました。
これにより、ビルや建物の遮蔽で電波が届きにくい場所や、人が密集するイベントでも柔軟にミリ波を届け、高速で安定した大容量通信をお客さまに提供することが期待できます。3社は今後、液晶反射板の実用化に取り組んでいきます。
<本実証の様子>
<屋外に設置された液晶反射板>
【液晶反射板の仕様】
サイズ :約50cm×50cm四方
重量 :約8kg
制御方法:スマートフォンでON/OFF、散乱パターンの変更が可能
■ 本実証について
1.背景
5Gで利用するミリ波などの高い周波数の電波は、高速で大容量の通信が期待できる一方、直進性が強いためビルや樹木の影響を受けやすい特徴があります。
これまでKDDI総合研究所とJDIは、小型の液晶反射板を開発し、電波の反射方向を切り替える実験を試験環境で行ってきました(注1)。実環境においてビル間通路など電波が届きにくいエリアに対し、反射方向を切り替えてピンポイントに電波を届けられるかが取り組むべき課題となっていました。
2.実証概要
本実証では以下を実施しました。
・実環境で28GHz帯のミリ波を反射させるために必要なサイズの可搬型液晶反射板を開発
・液晶反射板の設置位置と液晶に印加する(特定の電圧や電流を回路や素子に加える)電圧分布のシミュレーションを実施
・液晶反射板を使って、商用のミリ波電波をビルや建物の遮蔽で電波が届きにくい場所へピンポイントに反射させ、狙った場所に電波が届くことを確認
・太陽光パネル・バッテリーによる給電で液晶反射板が駆動することを確認
<実証結果(液晶反射板の設置前後の比較)>
本実証の結果から、液晶反射板を活用することで人の往来や通路の幅に合わせて柔軟にミリ波のエリアを構築することが可能となります。また、低消費電力という特徴を生かし、太陽光パネル・バッテリー給電での駆動を確認できたため、屋外のイベント会場などでの活用にも期待できます。
3.実証期間
2024年12月21日から2025年3月31日
4.実証場所
東京都新宿区西新宿地区
5.各社の役割
KDDI/KDDI総合研究所 | 本実証環境の構築および液晶反射板でのエリア拡張技術の開発、本実証の実行 |
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JDI | 液晶反射板の技術・装置開発 |
(参考)
■ ミリ波エリア拡大に向けた取り組み
ミリ波帯は高速通信が可能なため、駅のホームや競技場、待ち合わせ場所など人が集中する場所への設置を多く行っています。その反面、直進性が強く、ビルや樹木などの影響を受けやすい性質を持つため、緻密にエリアを展開するには多くの基地局を整備する必要があります。KDDIではこの問題を解決するため、ミリ波の基地局と連携しながら自律的かつ連続的なエリア形成を可能にした無線中継技術を開発しました(注2)。
Beyond 5G/6G時代に向けては、トラフィックの継続的な増加が見込まれるため、ミリ波を含む高周波数帯の活用が必要不可欠とされています。今後も、ミリ波の有効利用およびエリア拡大に向けて取り組んでいきます。
(注1)2021年10月7日 KDDI総合研究所 ニュースリリース
世界初 電波の反射方向が変えられる液晶メタサーフェス反射板の開発に成功
(注2)2024年12月16日 KDDI ニュースリリース
ミリ波エリアを飛躍的に拡大する無線中継技術の開発に成功
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