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世界初 電波の反射方向が変えられる液晶メタサーフェス反射板の開発に成功

~5G本格展開時代に向け、サービスエリアを柔軟に拡張可能~

2021年10月7日
株式会社KDDI総合研究所
株式会社ジャパンディスプレイ

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下「KDDI総合研究所」)と株式会社ジャパンディスプレイ(本社:東京都港区、代表執行役会長 CEO 兼 取締役:スコット キャロン、以下「JDI」)は、電波の反射方向を任意な方向へ変えられる、28GHz帯液晶メタサーフェス反射板(以下「方向可変型液晶メタサーフェス反射板」)の開発に世界で初めて成功しました(注1)。これにより、5Gや次世代移動通信の超高速・大容量なサービスエリアを、周辺の電波環境の変化にあわせて拡張することが可能となり、お客さまの利便性の向上が期待されます。

 

 

 

図1 方向可変型液晶メタサーフェス反射板(小形試作サンプル)

 

 

5Gで利用する28GHz帯などの高い周波数は、超高速・大容量な通信サービスを提供できる一方で、電波の直進性が強く、基地局のアンテナが見通せないビルや樹木の影などに電波が届きにくい場所(カバレッジホール)が発生しやすい特徴があります。このような場所へ5Gサービスを提供する方法として、基地局からの電波を特定方向に反射させてカバレッジホールへ届ける『メタサーフェス反射板』(注2)が注目を集めており、KDDI総合研究所は2021年1月に28GHz/39GHz帯デュアルバンド透明メタサーフェス反射板の開発(注3)を行うなど研究開発を進めています。

 

このたび、KDDI総合研究所とJDIは、電波の反射方向を電気的に変更可能な、方向可変型液晶メタサーフェス反射板を開発しました。方向可変型液晶メタサーフェス反射板は、ディスプレイなどの光制御に使われる液晶を電波の反射制御に応用し、反射素子とグランド(地板)との間に液晶層を取り入れ、反射素子を電極として兼用し電圧により電気特性(誘電率)の変更を可能とし、電気的な電波の反射方向制御を実現しました。

 

 

 

図2 方向可変型液晶メタサーフェス反射板の特長と利用イメージ

 

 

 

図3 液晶により反射方向が変わる仕組み(正面から電波が入射した場合)

 

 

試作した方向可変型液晶メタサーフェス反射板の小形サンプルを用いて電波無響室(注4)で実証実験を行い、28GHz帯の電波を設定した反射方向に変更できることを確認しました。実証実験では、図4および5のように、方向可変型液晶メタサーフェス反射板の電圧の設定を変更することで、入射した電波の反射方向を受信アンテナ#1から受信アンテナ#2の方向に変更され、各反射方向で電波が受信できることを確認しました。

 

 

 

図4 方向可変型液晶メタサーフェス反射板の実証実験の様子

 

 

 

図5 方向可変型液晶メタサーフェス反射板の実証実験の結果

 

 

今回の成果により、電波環境の変化によるカバレッジホールの位置の変化や、時間帯によるお客さまの分布変化にあわせて、柔軟なカバレッジホール対策ができるようになると期待されます。
今後、KDDI総合研究所とJDIは実用化を目指し、5Gのエリアでの実証実験を進めていきます。

 

 

 

 

 

 

<KDDI総合研究所の取り組み>
KDDIとKDDI総合研究所は、経済発展と社会的課題の解決を両立する持続可能な生活者中心の社会「Society 5.0」の実現を加速する、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定しました。両社は、ネットワーク、プラットフォーム、ビジネスの3レイヤの環境整備を進めると共に、3つのレイヤを支える先端技術となる7つの分野のテクノロジーと、それらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進します。
今回の成果は7分野のテクノロジーの中の「ネットワーク」に該当します。

 

<JDIの取り組み>
JDIは、今までにない発想と限りない技術の追求により、スマートフォン用、自動車用、VR用、ウェアラブル用及び産業機器用などの様々なディスプレイを世界中に供給してきました。今後は、ディスプレイづくりで培った高度な技術をディスプレイ以外の製品分野にも応用することで、人々が躍動する世界の創造、更には、安心、安全かつ持続可能な社会の実現に貢献していきます。
今回開発した液晶アンテナや今後の開発を通して、5G通信や次世代5G通信の発展に寄与していきます。

 

 

(注1)2021年10月7日時点 KDDI総合研究所調べ
(注2)電波を鏡面反射と異なる方向に反射できる反射板。反射板は、無線エリア内に発生するカバレッジホールを、基地局とは異なり回線が不要で通信可能なエリアにできるため、低コストにエリア拡張が可能となります。金属等の反射板では、鏡面反射であるため物理的な設置角度の制約が生じますが、メタサーフェス反射板は特定方向に反射できるため制約が軽減されます。液晶メタサーフェス反射板は、電源は必要となりますが、反射方向を電気的に可変できる特徴があります。
(注3)2021年1月20日発表
世界初、5G本格展開時代に向けた28GHz/39GHz帯デュアルバンド透明メタサーフェス反射板の開発に成功(報道発表)
(注4)電波を反射しない無響特性と、電波を外部に漏らさないシールド特性を持つ特別な実験室で、反射板の純粋な反射特性を評価することができます。

 

 

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。