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世界初 最新の映像符号化方式H.266|VVC対応のリアルタイムコーデックを用いた8Kライブ伝送の実証実験に成功

~より臨場感のある映像を様々なネットワーク環境で楽しむために~

2021年4月19日
株式会社KDDI総合研究所

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下「KDDI総合研究所」)は、最新の国際標準映像符号化方式H.266|VVC(Versatile Video Coding、以下「VVC」)に対応したリアルタイムコーデックシステム(以下「本システム」)を用いた8Kライブ伝送の実証実験に世界で初めて成功しました(注1)。
現行の8K放送の半分のビットレートで安定した映像品質を維持できることを実証したことにより、これまでは帯域保証されたネットワーク回線の利用が一般的であった8Kライブ伝送について、今後はモバイルも含めた様々なネットワーク回線の利用が可能となり、例えばパブリックビューイング会場の設営が容易になるなど、お客さまの視聴シーンが広がります。また、モバイルの通信条件などお客さまの受信環境に応じて体感品質が最適化される、いわゆるユーザーセントリックな高臨場感映像サービス(注2)の実現を後押しするものと期待されます。

 

【背景】
1.本実証実験は、2020年9月と12月にKDDI総合研究所から発表したVVCに関する以下2つの研究成果に続く取り組みです。
世界初 最新の映像符号化方式H.266|VVCに対応した4Kリアルタイムエンコーダを開発
世界初 最新の映像符号化方式H.266|VVC対応のリアルタイムコーデックを用いた4Kライブ伝送の実証実験に成功

 

2.VVCは最新の映像符号化方式であり、現行の4K/8K放送やインターネット経由の映像配信サービスで広く使用されている国際標準の映像符号化方式H.265|HEVC(High Efficiency Video Coding、以下「HEVC」)に対して、2倍の映像圧縮性能を実現します。国際標準化機関であるITU-TとISO/IECにより2020年8月に規格化されました。また、国内では総務省が推進する地上デジタルテレビジョン方式の高度化における映像符号化方式の1つとして採用が検討されています(注3)。

 

3.8Kは、現行の放送サービスにおける最大解像度であり、臨場感が高い視覚体験を提供します。さらに、設備点検等における微細な情報のやり取りが必要な遠隔作業支援(注4)など産業用途への応用も期待されています。

 

【実証実験の概要】
2021年4月16日に、KDDI総合研究所(埼玉県ふじみ野市)に設置した8Kカメラの映像をVVC対応の8Kリアルタイムソフトウェアエンコーダ(以下「VVC 8Kエンコーダ」)で圧縮し、ネットワーク回線を経由してライブ伝送を行い、KDDI research atelier(東京都港区)に設置の8Kモニタで安定的に視聴できることを実証しました。
VVCは従来方式であるHEVCに比べて2倍の圧縮性能を有することから、現行の8K放送(HEVCにより85Mbps)を例にとると、所要ビットレートを約40Mbpsに低減できます。

 

 

 

<実証実験のイメージ>

 

 

【実証実験のポイント】
このたび、KDDI総合研究所はVVC 8Kエンコーダを世界で初めて開発しました(注1)。マルチコアCPUプラットフォームにおいてVVCエンコーダの実現に有効な高速化処理および並列化処理を改善し、4K映像だけでなく、8K映像にまでスケールアウトさせる技術を考案・導入しました。解像度の増大に合わせてCPU個数を増加させる一方で、CPU間での圧縮映像のやりとりを最小限に抑えて待機時間を減少させ、CPU使用率を上げることで処理速度の向上に成功しました。

 

【今後の展望】
本実証実験では、ネットワーク回線を介した8Kライブ伝送を行い、HEVCに比べて半分のビットレートで十分な映像品質が得られ、さらに本システムの長時間の安定動作が可能であることを確認しました。今後は、スポーツシーンなど高フレームレート映像への対応を視野に、処理速度のさらなる改善を進めていきます。

 

なお、本実証実験は、総務省の「戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)国際標準獲得型」(JPJ000595)における「多様な用途、環境下での高精細映像の活用に資する次世代映像伝送・通信技術の研究開発」の委託を受けて実施した研究開発の成果を活用した、KDDI総合研究所独自の取り組みです。

 

■ KDDI総合研究所の取り組み
KDDIとKDDI総合研究所は、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate5.0」を策定し、その具体化に向け、イノベーションを生むためのエコシステムの醸成に必要と考えられる「将来像」と「テクノロジー」の両面についてBeyond 5G/6Gホワイトペーパーにまとめました。
両社は新たなライフスタイルの実現を目指し、7つのテクノロジーと、それらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進します。今回の成果は7つのテクノロジーの中の「XR」に該当します。

 

 

(注1)8K対応のVVCリアルタイムエンコーダの開発事例およびこれを用いてネットワーク回線を経由してライブ映像伝送した実験例として世界初。(2021年4月19日時点、KDDI総合研究所調べ)
(注2)映像を視聴するユーザーの状況に合せて最適な伝送手段を提供し、結果として高い臨場感を維持したコンテンツ体験を実現するサービス。今回の取り組みは、8K映像の所要ビットレートを半減できることから、例えば回線状況変化が視聴解像度に与える影響を軽減できるという点で、ユーザーセントリックサービスの実現につながります。
(注3)情報通信審議会 情報通信技術分科会 放送システム委員会(第74回)、資料74-2
(注4)世界初、スマートフォンによる8K映像伝送に対応した遠隔作業支援システムを開発

 

 

【用語説明】
➢ビットレート:単位時間あたりに伝送されるビット数。ビットパーセカンド(bps:bit per second)は1秒あたりに伝送されるビット数。

 

➢エンコーダ:映像符号化を担うシステムを指します。映像符号化は、動画像信号を限られた帯域や容量で伝送や蓄積するために利用する圧縮方法で、画像内や画像間の類似性を利用してデータ量を削減しています。例えば2018年から開始されている新4K/8K衛星放送では国際標準符号化方式であるH.265|HEVCが利用されており、もともと約72Gbps必要とされる8K映像を85Mbpsまで圧縮して伝送しています。

 

➢デコーダ:エンコーダが出力した圧縮データを受信し、映像に復号するシステムを指します。映像符号化方式に対応した復号処理を用意する必要があり、一般に方式を跨いだ相互接続性は保証されません。

 

➢H.265|HEVC:ITU-TとISO/IECの各下部組織の合同により2013年に規格化された映像圧縮符号化標準で、国内の放送用途ではARIB STD-B32第3部で規定されており、新4K/8K衛星放送などの運用規定にも採用されています。

 

➢リアルタイムエンコーダ:たとえば30fps(frame per second)の8K映像を対象とする場合、30fps以上の速度で8K映像を符号化処理できるものを指し、映像のライブ伝送に必須の機器となります。

 

 

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