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国際学会ICASSP 2023での採録論文がTop 3% Paper Recognitionに認定

2023年6月16日
株式会社KDDI総合研究所

KDDI総合研究所の三次元(以下「3D」)点群データ(注1)に対する高精度ノイズ除去技術に関する研究論文(以下「本論文」)が、信号処理分野の著名な国際会議ICASSP 2023(注2)のTop 3% Paper Recognition(注3)に認定されました。本論文は、共同研究先である南カリフォルニア大学Antonio Ortega教授らの研究グループとの共同研究による成果です。

 

 

【研究概要】

KDDI総合研究所は、フィジカル空間から取得した3Dデータをユーザー間で相互に伝送、表示することで、「あたかも今その場にいるかのような」テレコミュニケーションの実現を目指しています。このような高度なXR体験の実現に向けては、フィジカル空間に存在する人物などの被写体を3Dデータとして取得する空間再現技術が重要な要素技術となります。一方、3Dデータの取得に使用するセンサーの測定誤差などによって空間再現精度が劣化する課題がありました。そこで本論文では、3Dデータの表現形式として広く用いられている3D点群データのノイズを高精度に除去する手法を提案しました。
具体的には、始めに3D点群データからグラフ(注4)を構築し、次にグラフ上の信号の高周波成分(信号の変化が激しい部分)を除去することでノイズ除去を実現します。このようなアプローチのノイズ除去手法は従来から存在しますが、提案した手法では3D点群データの表面の形状を考慮し、表面に沿わない点同士が接続されないようにグラフを構築することで、より3D点群データの形状の特徴を捉えたグラフを構築し、優れたノイズ除去精度を実現しました。
今回、従来とは異なる新しいグラフ構築方法を提案した新規性と、実験を通じて多様なデータに対する有効性を示したことが高く評価されました。ノイズが含まれる3D点群データに対し提案手法を適用することで表現品質を向上し、XR体験の中でユーザーの体験価値を高めることが期待されます。

 

【原著論文情報】
Ryosuke Watanabe, Keisuke Nonaka, Eduardo Pavez, Tatsuya Kobayashi and Antonio Ortega, "Graph Wavelet-Based Point Cloud Geometric Denoising with Surface-Consistent Non-Negative Kernel Regression," 2023 IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), 2023, pp. 1-5,
Graph Wavelet-Based Point Cloud Geometric Denoising with Surface-Consistent Non-Negative Kernel Regression

 

本論文は、総務省SCOPE(国際標準獲得型)JPJ000595の委託を受けて実施した研究開発の成果です。

 

【KDDI総合研究所の取り組み】
KDDIとKDDI総合研究所は、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定し、その具体化に向け、イノベーションを生むためのエコシステムの醸成に必要と考えられる「将来像」と「テクノロジー」の両面についてBeyond 5G/6Gホワイトペーパーにまとめました。
両社は新たなライフスタイルの実現を目指し、7つのテクノロジーと、それらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進します。今回の成果は7つのテクノロジーの中の「XR」に該当します。

 

 

 

(注1)3D物体を点の位置と色の集合で表現するデータ形式。
(注2)国際学術会議IEEE ICASSP(2023 IEEE International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing)は、信号処理領域のフラグシップと位置づけられる国際学術会議。
(注3)採録論文の上位3%にあたる評価を受けた論文が認定。
(注4)位置と色の値を持つ多数の点(3D点群)と、類似性の高い点同士の接続(辺)から成るデータ構造。

 

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