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疑似たき火空間による内省効果を検証

~経験の多様な視点からの捉え直しができたとの回答が85%~

2023年4月3日
株式会社KDDI総合研究所

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下「KDDI総合研究所」)は、2023年2月22日から3月14日まで、ワーカーが特定のオフィスに限らず生産性高く働けるワークスタイルの実現を目指して、効果的な内省(リフレクション)を行える空間の検証(以下「本実証実験」)を実施しました。
内省とは、これまでの経験を振り返り、得られた気づきを他の状況にも応用できるように理論化することであり、人が成長する上で重要な活動として捉えられています(注1)。本実証実験では、予備実験で得られたデータに基づいて、「プライバシーが確保され、普段と異なる思考が誘発される疑似たき火空間が内省に適している」という仮説を検証しました。
この結果、経験の多様な視点からの捉え直しについて、疑似たき火空間では「非常にできた」「できた」との回答が全体の85%となり、普段のオフィスでの回答の63%に比べて22ポイント上回るなど、疑似たき火空間による内省が、普段のオフィスでの内省に比べて高い効果が認められる傾向が確認できました。
なお、本実証実験は、西新宿スマートシティ協議会の西新宿CAMPプロジェクト(注2)の一環として行ったものです。

 

1.背景・目的
西新宿エリアは、公園や道路、公開空地などが多く、エリアの約80%がオープンスペースであり、この広大なオープンスペースを有効に活用していくことが「西新宿地区まちづくり指針」(2021年4月改定、西新宿懇談会)に定められています。
本実証実験では、こうした西新宿のオープンスペースを有効活用しつつ、内省に適した空間の検証を行いました。具体的には、予備実験(注3)によって内省に適していると判明したたき火空間を都心でも気軽に体験できるように、疑似的なたき火空間を西新宿に構築し、その効果を検証しました。

 

2.実証実験の概要
西新宿エリアの新宿中央公園にテント型ワークスペースを仮設し、映像・音・香り・温風を用いて、疑似的にたき火を体験できる空間を構築しました。実験参加者は、テント型ワークスペースで疑似たき火を体験しながらの内省と、普段のオフィスでの内省を2回ずつ行いました。

 

 

<テント型ワークスペースの実証の様子>

 

 

 

<レイアウト>

 

 

 

<映像>

 

 

 

1)実施期間
2023年2月22日から3月14日

 

2)実施場所:
● 西新宿のテント型ワークスペース:新宿中央公園 眺望のもり
● 参加者のオフィス

 

 

<眺望のもりに設置したテント型ワークスペース>

 

 

 

3)西新宿の内省空間(疑似たき火空間):
予備実験で内省に適しているとの仮説を立てた、「プライバシーが確保され、普段とは異なる思考が誘発されるたき火空間」を再現すべく、新宿中央公園にテント型ワークスペースを設置し、映像・音および香りでたき火を疑似的に体験できる環境を構築しました。なお、たき火空間を再現する上で、予備実験を行ったTAKIVIVA(注4)をイメージして疑似たき火空間の構築を行いました。

 

 

<TAKIVIVA>

 

 

 

● テント型ワークスペース:
TAKIVIVAでは、道中で樹木や草といった豊かな自然を目にすることで、たき火を行う前のワクワク感が醸成されます。このワクワク感が効果的な内省に寄与すると考え、新宿中央公園の眺望のもりに、テント型ワークスペース(LIFULL社のインスタントハウスクラフトタイプ※注5)を設置しました。実験参加者は疑似たき火を体験する前に新宿中央公園の自然豊かな遊歩道を歩くことになるため、TAKIVIVA同様に疑似たき火を行う前のワクワク感が得られます。

 

● 映像・音:
きたもっく社監修のもと、TAKIVIVAで撮影したたき火の映像・音を使って、実験参加者には疑似たき火を体験してもらいました。

 

● 香り:
疑似たき火の臨場感を増すために、たき火の映像に香りを連動させました。TAKIVIVAのたき火環境の香りを再現するために、ソニーが技術協力した香り噴出装置および小川香料株式会社協力による香料により、たき火の映像と連動した香りを体験してもらいました。

 

● 温風:
疑似たき火の臨場感を増すために、実験参加者にはたき火の映像開始と同時にファンヒーターによる温風を体験してもらいました。

 

4)振り返り内容と効果測定:
実験参加者は、「ある1日の仕事」をテーマとし、Keep(うまくいったこと)、Problem(改善すべきこと)、Try(新たに実践すべきこと)の3点で振り返るKPTのフレームワークに沿って、期間中に計4回の内省を行いました。また、実験参加者には、内省を実施した直後に経験学習尺度(注6)を参考にしたアンケートに回答してもらい、普段のオフィスと疑似たき火空間で内省の効果を比較しました。

 

5)実施結果:
経験学習尺度を参考にしたアンケート(回答者24名)によって、オフィスと疑似たき火空間で内省の効果を測定した結果、疑似たき火空間の方が高い効果の内省を行えることが分かりました。
加えて、参加者からは疑似たき火空間での内省について好意的な意見が多くみられました。

 

【参加者の声】
● たき火を見ることで他のことに思いを巡らせたり物事を俯瞰して見て考えたりできるため、内省の効果に繋がると感じる。
● 内省に行き詰まった時にたき火の映像を眺めると思考に集中できる感覚があった。
● (疑似たき火空間での内省について)〝空間的に1人になれること”が集中につながったように感じた。
● (オフィスでの内省について)オフィス内だったので、周りの目が気になってしまった。

 

 

<内省の効果測定結果>

 

 

内省の効果測定結果の詳細は、別紙をご覧ください。

 

 

さらに、実証期間終了後に事後アンケート(回答者20名)を実施したところ、回答者の80%は疑似たき火空間を再利用したいという意向があり、疑似たき火の受容性が高いことが確認できました。また、75%の回答者が「ある1日の仕事」以外にも、「自分のキャリア」に関する内省で疑似たき火空間を利用したいと考えており、ユースケースの拡大が求められていることが分かりました。

 

3.協力会社および各社の役割

 

事業者 実施内容
KDDI総合研究所

実証の企画・実施、効果検証

コクヨ 香りと映像の連動システムの開発
大成建設

実証場所の調整

LIFULL テント型ワークスペースの設置
ソニー 香り再現の技術協力
きたもっく 映像コンテンツ監修

 

 

4.今後について
KDDI総合研究所は、特定のオフィスに限らず生産性高く働けるワークスタイルの実現を目指して、効果的な内省を行える空間のみならず、「誰と」「何を」振り返ることがワーカーの成長をより促す内省を実施できるのか検証していきます。

 

 

 

(注1)経済産業省・中小企業庁「我が国産業における人材力強化に向けた研究会の報告書」では、我が国人材力強化に向けたアクションプラン(施策)のうち個人として取り組むべき方向性として「リフレクションの徹底」を挙げています。具体的には「自らが持つ・持たざる能力や体験を振り返ること(リフレクション)を通じて成長し続けるとともに、自分の強み/弱みを認識(経験/スキルを棚卸し)することで、今後のキャリアの可能性を開いていくことが期待される」としています。
(注2)西新宿CAMPプロジェクト
(注3)内省に適した空間を検討するにあたって、日常的に内省を行っている生活者のインタビュー結果から内省に効果があると仮説を立てた「個室空間」「屋外」「屋外たき火あり」の3つの環境と、「日常空間(自宅・オフィス)」で、2022年9月に予備実験を行いました。その結果、日常空間(自宅・オフィス)がその他3つの環境に比べて明らかに効果が低く、屋外たき火ありの環境が最も内省の効果が高いことが判明しました。この理由について自由記述の回答を分析した結果、「プライバシーが確保され、普段と異なる思考が誘発される環境」が内省の効果を高めるとの仮説を立てました。
(注4)TAKIVIVA
(注5)インスタントハウス
(注6)木村充、舘野泰一、関根雅泰、中原淳「職場における経験学習尺度の開発の試み」(2012)

 

 

 

【別紙】

 

アンケート11項目の結果

 

<内省の効果測定結果>

 

 

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。