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AI分野の最難関国際学会NeurIPS 2022に論文が採録

2022年11月29日
株式会社KDDI総合研究所

2022年9月15日イリノイ大学シカゴ校(以下「UIC」)Bing Liu教授の研究グループとKDDI総合研究所との共同研究において、継続学習技術に関する論文「A Theoretical Study on Solving Continual Learning※」(以下「本論文」)が、AI分野の最難関国際学会である「NeurIPS 2022(注1)」に採録されました(論文採録率 25.6%:NeurIPS 2022実績、2022年11月28日-12月9日発表予定)。

 

※2023年1月11日、論文タイトル修正。原著論文のタイトルが変更されたことに伴う更新

 

【研究概要】
従来のAIは、大量データを学習させ精度を向上させても、新たな分類クラスのデータを学習すると、過去学習した分類クラスを忘れてしまいます。UIC Bing Liu教授の研究グループとKDDI総合研究所は、この従来のAIの欠点である、環境変化(例:動物に関する画像分類において、犬、猫などの分類クラスが増えるといったケース)への対応が難しいという課題に取り組んでいます。共同研究では、継続学習の改善によりこの課題を解決し、AIが過去の分類クラスを忘れずに、多種多様な分類クラスに適応する能力を獲得することを目指しています。これにより、例えば障害検知において、新しい複雑な障害パターンに対応すると同時に、古い障害パターンにも対応できます。

 

本論文では、継続学習の課題の一つであるClass-Incremental Learning(注2)を理論的に解明し、この問題が、1)新たなデータが未知の分類クラスに属するかどうかを見極める問題(変化検知)と、2)既知の分類クラスのいずれかに属する場合にどの分類クラスかを見極める問題、に分解できることを示しました。この理論を基に画像認識タスクにおいて実験的な評価を行ったところ、継続学習ではあまり着目されてこなかった変化検知手法の改善が分類精度向上に貢献することを確認し、継続学習以外の機械学習分野との融合・発展の可能性を示唆しました。

 

KDDI総合研究所は、AIが自律的に環境変化に適応して成長するAIを「成長可能AI」と定義し技術確立を目指しており、本論文はその理論的な土台を構築したという点で重要な意義を持つものです。

 

なお、今回の成果は、KDDI総合研究所が進める海外最先端の研究者との共同プロジェクトによるものです。

 

海外最先端の研究者との共同研究プロジェクトの開始(2020年10月26日報道発表)

 

【原著論文情報】
Gyuhak Kim (UIC), Changnan Xiao (New York University), Tatsuya Konishi, Zixuan Ke (UIC), Bing Liu (UIC), A Theoretical Study on Solving Continual Learning, NeurIPS 2022.   

 

KDDIとKDDI総合研究所は、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定し、その具体化に向け、イノベーションを生むためのエコシステムの醸成に必要と考えられる「将来像」と「テクノロジー」の両面についてBeyond 5G/6Gホワイトペーパーにまとめました。両社は新たなライフスタイルの実現を目指し、7つのテクノロジーとそれらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進します。今回の成果は7つのテクノロジーの中の「AI」に該当します。
KDDI総合研究所は、2022年4月にHuman-Centered AI研究所を設立し、人とAIが共生し、インタラクションを通じて共に成長する技術の研究開発を推進しています。今後、本論文の研究成果を基に、AIが自律的にフィジカル空間に適応して成長する「成長可能AI」の技術確立に向けた取り組みを進めていきます。

 

 

(注1)Thirty-sixth Conference on Neural Information Processing Systems
(注2)Class-Incremental Learningは継続学習の問題設定の1つで、モデルに学習させる度に学習対象の種類(分類クラス)が段々と増えていく状況を想定しています。例えばAとBからなるデータを学習した後にCとDのみからなる別のデータを学習した際、CとDのみならず以前学習したAとBに対する予測精度も保つことが求められます。

 

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。