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AI分野の最難関国際学会IJCAI-ECAI 2022にLong Oral採録

2022年8月24日
株式会社KDDI総合研究所

KDDI総合研究所と南カリフォルニア大学Yan Liu教授の研究グループが執筆した、時間と空間に紐づいたデータ(以下「時空間データ」)を複数粒度に分割・統合した、効果的な将来予測技術に関する論文が、AI分野の最難関国際学会である「IJCAI-ECAI 2022(注1)」にLong Oral採録(論文採録率15%、うち25%がLong Oralに選出、IJCAI-ECAI 2022実績)されました。また、本論文の成果を、2022年7月23~29日にオーストリア ウィーンおよびオンラインで開催されたIJCAI-ECAI 2022で発表しました。

 

【研究概要】
人流データや電力消費量などの時空間データの将来予測は、昨今のコロナ禍における混雑状況把握やカーボンニュートラルの実現に向けた施策効果予測といった観点でも重要になってきています。しかし、単一粒度の時空間データ(例えば、市区町村別の1時間ごとの消費電力量)のみを利用する場合、データ欠損などにうまく対処できずに予測精度が低くなるといった課題がありました。本論文では、複数粒度の時空間データ(例えば、都道府県、市区町村、町丁目などそれぞれの場所の1時間、1日、1週間ごとの消費電力量)を統合分析する手法(以下「本手法」)を提案しました。具体的には、複雑に変化する現象の解析が可能な物理法則であるKoopman theory(注2)を使って粒度ごとの変化の傾向を学習し、粒度間の自己注意機構(Self-Attention mechanism)(注3)を使って複数粒度の変化の傾向を効率的に統合する手法です。本手法により、これまでに比べ、より正確な時空間データの将来予測が可能になり、防災、エネルギーの効率的な供給などへの適用が期待されます。

 

なお、今回の成果は、KDDI総合研究所が進める海外最先端の研究者との共同研究プロジェクトによるものです。
2020年10月26日の報道発表
海外最先端の研究者との共同研究プロジェクトの開始
~次世代社会構想KDDI Accelerate 5.0の実現に向けて~

 

【原著論文情報】
Chuizheng Meng, Hao Niu, Guillaume Habault, Roberto Legaspi, Shinya Wada, Chihiro Ono, Yan Liu. “Physics-Informed Long-Sequence Forecasting From Multi-Resolution Spatiotemporal Data”, The 31st International Joint Conference on Artificial Intelligence and the 25th European Conference on Artificial Intelligence (IJCAI-ECAI 2022).  

 

KDDIとKDDI総合研究所は、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定し、その具体化に向け、イノベーションを生むためのエコシステムの醸成に必要と考えられる「将来像」と「テクノロジー」の両面についてBeyond 5G/6Gホワイトペーパーにまとめました。両社は新たなライフスタイルの実現を目指し、7つのテクノロジーとそれらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進します。今回の成果は7つのテクノロジーの中の「AI」に該当します。
KDDI総合研究所は2022年4月よりHuman-Centered AI研究所を設立して人とAIが共生し、インタラクションを通じて共に成長する技術の研究開発を推進しています。本論文の研究成果を基に、過去データの無いもしくは少ない状況で、他の種類のデータを活用した高精度な予測技術の実現に向け、引き続き取り組んでいきます。

 

 

(注1)The 31st International Joint Conference on Artificial Intelligence and the 25th European Conference on Artificial Intelligence (IJCAI-ECAI 2022)
(注2)Bernard O Koopman. “Hamiltonian systems and transformation in hilbert space”, Proceedings of the national academy of sciences of the United States of America, 17(5):315, 1931.
(注3)入力データのうち、どこに注目すべきかを学習し決定する方法

 

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。