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ヒューマンファクターセキュリティー分野の難関国際会議SOUPS 2022で2件の論文採択

2022年6月28日
株式会社KDDI総合研究所

2022年5月16日、人的要素を考慮したセキュリティー研究推進のために重要となる、ユーザー参加型の実証実験を成功させるための設計や運営の指針についてまとめたKDDI総合研究所の論文が、2022年8月7~9日に開催される国際会議「Symposium on Usable Privacy and Security(SOUPS 2022)」のテクニカルセッションに採択(採択率 26%、SOUPS 2021実績)されました。また、2022年6月10日に同会議のポスターセッションでも、ユーザーのセキュリティー意識やセキュリティーの対策実施状況を限られた数の質問により高精度で推定するための心理尺度開発に関する論文が採択されており、ヒューマンファクターセキュリティー分野の研究発展へのKDDI総合研究所の貢献が認められています。

 

 

1.テクニカルセッション採択論文について

 

【研究概要】

一般利用者によるIT機器の利用実態に基づいて人的要素を考慮したセキュリティー研究を行うため、近年ユーザー参加型の実証実験が行われることが増えています。こうした実証実験はユーザーのプライバシー懸念への配慮が必要なため、参加者の募集や長期にわたって継続することに難しさがありました。本論文では、KDDI総合研究所などが行った3つのユーザー参加型の実証実験を取り上げて、実証実験を設計する際のユーザー募集・継続利用促進・データ収集において考慮すべき要素をまとめています。具体的には、ユーザー募集における金銭的な報酬の効果や参加者の偏りへの影響、継続参加を促すためのユーザーへの働きかけのタイミングや頻度など、3つのユーザー参加型実証実験から得られたさまざまな知見を、同様の実証実験の参考となる情報として解説しています。この成果はヒューマンファクターセキュリティー分野の研究における大規模・長期間の実証実験の実施を助け、本分野の今後の研究の発展に大きく貢献することが期待されます。

 

【原著論文情報】
Akira Yamada, Kyle Crichton, Yukiko Sawaya, Jin-Dong Dong, Sarah Pearman, Ayumu Kubota, and Nicolas Christin, “On recruiting and retaining users for security-sensitive longitudinal measurement panels,” in Proceedings of the Eighteenth Symposium on Usable Privacy and Security (SOUPS 2022), August 2022. 

 

 

2.ポスターセッション採択論文について

 

【研究概要】

セキュリティー被害防止策をユーザーに寄り添う形で的確に実現するための要素技術として、ユーザーのセキュリティーに関する意識や対策実施状況を測定する心理尺度が注目されています。これまでに開発されている心理尺度は、それぞれのユーザーの意識の比較や時間経過による変化の測定などには有効ですが、適切なセキュリティー対策行動を実際にとっているか否かの実態を高精度に推定することが難しいという課題がありました。そこで、セキュリティー対策行動を網羅的に包含した心理尺度を作成することにより課題を解決できるのではないかという仮説を立て、推奨されている既存の374のセキュリティー対策のリストから、セキュリティー対策実施状況の測定に特に有効な23の質問により構成される心理尺度を作成しました。今回の成果は、ユーザーの状況に応じたセキュリティー被害防止策を検討することへの貢献が期待できます。今後はこの心理尺度の妥当性評価を行い、完成度を高めていきます。

 

【原著論文情報】
Yukiko Sawaya, Takamasa Isohara, and Mahmood Sharif, “Toward Accurate Prediction of Security Behavior via Comprehensive Scales,” (poster), Eighteenth Symposium on Usable Privacy and Security (SOUPS 2022), August 2022.  

 

 

KDDIとKDDI総合研究所は、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定し、その具体化に向け、イノベーションを生むためのエコシステムの醸成に必要と考えられる「将来像」と「テクノロジー」の両面についてBeyond 5G/6Gホワイトペーパーにまとめました。両社は新たなライフスタイルの実現を目指し、7つのテクノロジーと、それらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進しており、セキュリティー分野においては「ユーザーセントリックなプライバシー保護」に関する研究に取り組んでいます。本論文の研究成果を基に、ユーザーの信頼感や納得感を伴って、プライバシーを保護する技術の実現に向け、引き続き研究開発を推進していきます。

 

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