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イシクラゲの培養に成功、CO2吸収・固定能力が2倍以上となる成果を確認

~藻類培養・育種技術の高度化でカーボンニュートラルの実現に貢献~

2022年12月6日
株式会社KDDI総合研究所
信州大学農学部

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下「KDDI総合研究所」)と、信州大学農学部(学部長:米倉真一)の伊原正喜准教授は、環境を最適化する藻類培養装置を開発し、これを用いて、藻類(注1)の一種であるイシクラゲ(学名:Nostoc commune)の培養に成功しました。さらに、今回培養したイシクラゲが、環境を最適化しない状態で培養したイシクラゲに比べ、二酸化炭素(CO2)吸収・固定能力(注2)が2倍以上(注3)となることも確認しました。KDDI総合研究所と伊原正喜准教授は、今後もイシクラゲのCO2吸収・固定能力を高める取り組みを進め、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

 

KDDI総合研究所と信州大学農学部は、本成果を2022年12月7日~9日に東京ビッグサイトで開催されるエコプロ2022で展示します(ブース:5-043)。

 

 

 

 

【背景】
藻類は光合成によるCO2吸収・固定能力を有しており、成長が早く、培養規模の調整も可能で、固定した炭素を炭素化合物としてカーボンリサイクル(注4)が可能であることから、CO2削減の手段の1つとして期待されています。これまでに商業培養に成功している藻類として、スピルリナ、クロレラ、ドゥナリエラ、ユーグレナ、クラミドモナスなどが挙げられます。
伊原正喜准教授は藻類の中でもイシクラゲに着目し、培養の取り組みを開始していました(注5)。KDDI総合研究所では、カーボンニュートラルの実現に向けた研究開発を進めており、その1つとして藻類に注目し、伊原正喜准教授と共同研究を開始することとしました。

 

【実証実験の概要と成果】
KDDI総合研究所と伊原正喜准教授は、2022年3月から2022年11月に、イシクラゲが有するCO2吸収・固定能力を高めることを目的に、藻類培養技術の実証実験(以下「本実証」)を実施しました。

 

本実証では、閉鎖系培養環境において培養期間、光、水量、水温などが同一にもかかわらず、特定の条件を変更することで、イシクラゲのCO2吸収・固定能力を2倍以上に高められることを発見しました。効率よく培養するために何が重要となるのか、何に気をつけなければならないのか、未解明の部分が多いイシクラゲでしたが、今回の連携においてその突破口が開かれたと言えます。現在、その能力をさらに引き出すための条件検討を進めています。

 

 

培養条件
(培養期間、光、水量、水温などは全て同一)
変更前(写真左) 変更後(写真右)
平均直径(mm)※ 10.0(±2.5) 16.7(±1.6)
平均CO2吸収・固定量(mg)※ 29.7(±9.5) 72.1(±24.6)

※1個体あたり(注6)

 

 

 

イシクラゲの直径とCO2吸収・固定量の比較

 

 

【今後の展望】
KDDI総合研究所と伊原正喜准教授は、イシクラゲのさらなるCO2吸収・固定能力の向上や、さまざまな規模での培養の検討、培養装置の駆動エネルギーとして太陽光の活用などを通し、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進めていきます。

 

 

 

(注1)酸素発生型光合成を行う生物のうち地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものの総称。藻類は、昆布やワカメなど海藻などの大型藻類と、イカダモやミカヅキモ、ボルボックスといった光学顕微鏡下で認識できる大きさの微細藻類に分類できる。
(注2)光合成などによりCO2を体内に取り込み、炭素化合物として蓄え、大気中のCO2を減軽する能力のこと。
(注3)同一期間における炭素化合物への変換量を計測するため、特定の培養条件を変更する前のイシクラゲと変更した後のイシクラゲの有機体炭素量を計測し比較。
(注4)CO2を炭素資源(カーボン)と捉え、これを回収し、多様な炭素化合物として再利用(リサイクル)すること(出典:資源エネルギー庁ウェブサイト)。
(注5)信州大学農学部農学生命科学科生命機能科学コース 生物有機化学研究室 
(注6)培養したイシクラゲのうち、20個体をランダムサンプリングした直径および全有機体炭素量の平均値(カッコ内は95%信頼区間)。

 

 

 

■ KDDI総合研究所の取り組み
KDDIでは、2020年5月に 「KDDI Sustainable Action~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~」を策定し、KDDIグループ全体で2050年度までにカーボンニュートラルを達成することを目指し、ICTの活用によって社会の環境負荷低減に貢献することを宣言しています。これらを実現する ICT技術の確立に向けて、KDDI総合研究所ではブルーカーボンの算定や藻類の培養をはじめとする研究開発により、カーボンニュートラルの実現への取り組みを進めていきます。

 

■ 信州大学農学部の伊原正喜准教授の取り組み
石油『後』の社会を想定し、微生物の力を借りてさまざまな方法で「カーボンリサイクル」を達成するための研究に取り組んでいます。

 

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