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日本初、モバイル回線に接続したスマートフォンで遠隔制御可能な水上ドローンの開発

~七尾湾で実用化に向けた実証実験を開始~

2020年11月19日
株式会社KDDI総合研究所
大阪府立大学

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下「KDDI総合研究所」)と大阪府立大学(大阪府堺市、学長:辰巳砂昌弘)は、ロボット技術の活用による漁業の効率化を目的として、日本初(注1)のモバイル回線に接続したスマートフォンでの遠隔制御と、長時間使用が可能な水素燃料電池を搭載した水上ドローンを、日本海工株式会社の協力のもと開発しました。実用化に向け、本年11月から石川県七尾湾で、4G LTEネットワーク(以下「4G LTE」)に接続した水上ドローンの遠隔操作性評価と、水素燃料電池を搭載する水上ドローンの安全性や運用性、性能面での評価・検証の実証実験を開始しました。

 

 

 

 

日本国内の漁業就業者数は高齢化や後継者不足により、1988年から一貫して減少傾向(注2)であり、漁業の効率化と省人省力化が持続可能な水産業の実現に向けた社会課題の一つになっています。近年、水産分野におけるICTやロボット技術の活用が課題解決の一手段として着目されており、漁業就業者の勘や経験に基づく漁業から、先端技術やデータを活用した漁業への転換(注3)が推進されています。

 

この度KDDI総合研究所と大阪府立大学は、ロボット技術の活用による漁業の効率化や、沿岸部の海洋環境推定などのデータ分析に必要となる広域な海洋環境データ収集の省人省力化を目的として、スマートフォンでの遠隔制御と長時間使用が可能な水素燃料電池を搭載した水上ドローンを開発し、実証実験を開始します。実証実験では、4G LTEに接続するスマートフォンの画面操作で、水上ドローンに搭載されたカメラの映像を見ながら操作するリアルタイム制御と、事前にスマートフォン上で作成した航路に従って自律航行する自律制御の評価を行い、実際の漁場から離れた自宅や事務所などの遠隔地から水上ドローンを制御し海洋環境の調査が可能か検証します。また、広域な海洋環境データの連続測定を実現するために、電源として搭載した水素燃料電池の連続航行可能時間や、他の電源との性能比較、安全性の評価・検証も行います。

 

大阪府立大学大学院 工学研究科 海洋システム工学分野 准教授兼大阪府立大学養殖場高度化推進研究センター センター長 二瓶泰範は次のように述べています。
水上ドローン(四胴型自動航行船「ロボセン」)は海面・内水面を利用した養殖場等の現場で活用するツールとして生み出されました。水上ドローンの主な機能は大阪府立大学にて特許を保有したものです。大阪府立大学養殖場高度化推進研究センター(注4)では水上ドローンのユースケースとして養殖場内の高密度・高頻度自動水質計測を実施しています。この度の実証実験により、スマートフォンによるモニタリングや現在のリチウムイオン電池から燃料電池による航行試験も実施されます。この付加技術により、水上ドローンが多くの方々に幅広くお使いいただけるツールとなるのではないかと期待しています。

 

KDDI総合研究所は、今後、今回の実証実験を通じて取得した各種データを検証することで水上ドローンの性能向上を図ると共に、水上ドローンを活用した離島への物資配送や災害対策など、新たな応用展開を視野に入れ、実用化に向け全国での海上実験を順次実施する予定です。さらに、従来の鉛蓄電池やリチウムイオン電池と比較して単位重量あたりの電池容量が大きく(注5)、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を排出しないため水素燃料電池についても、2030年の水素社会(注6)の到来と小型ロボットへの水素燃料電池搭載を見据えて研究開発を進めています。

 

<KDDI総合研究所の取り組み>
KDDIとKDDI総合研究所は、経済発展と社会的課題の解決を両立する持続可能な生活者中心の社会「Society 5.0」の実現を加速する、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定しました。両社は、ネットワーク、プラットフォーム、ビジネスの3レイヤの環境整備を進めると共に、3つのレイヤを支える先端技術となる7つの分野のテクノロジーと、それらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進します。
今回の成果は7分野のテクノロジーの中の「IoT」に該当します。

 

<大阪府立大学の取り組み>
大阪府立大学ではSDGsを推奨しており、本研究が SDGs 14「海洋資源」に合致いたします。

 

 

 

 

詳細は別紙をご参照ください。

 

 

 

 

 

(注1)2020年11月19日 KDDI総合研究所調べ
(注2)水産庁、令和元年水産白書
(注3)水産庁、スマート水産業の社会実装に向けた取組について
(注4)養殖場高度化推進研究センター
(注5)東京大学、研究者によるキーワード解説「蓄電・燃料電池」
(注6)経済産業省、水素・燃料電池戦略ロードマップ

 

 

 

【別紙】

 

■水上ドローンの特徴
水上ドローンは四つの船体を有し、各船体を独立的に制御することで船体の定点保持や急旋回といった特徴的な動作が可能です。水上ドローンは航行時と海洋環境データの測定時で異なる形態を有し、用途に応じた選択が可能です。また、従来の単胴船に比べ横波などによる転覆の危険性も低く、自律航行する際の安全性も考慮した設計となっています。

 

 

 

 

■スマートフォンによる水上ドローンの遠隔制御
スマートフォンの画面操作により水上ドローンの前後進・左右旋回や形態変更など各種制御が可能です。また、ユーザは水上ドローンが搭載するカメラ映像をスマートフォンの画面上で確認しながら遠隔制御ができると同時に、水上ドローンの位置などを含む各種センサ情報を確認することができます。

 

 

 

 

■スマートフォン操作による自律航行航路の作成
スマートフォン画面に表示される地図/衛星写真上を、水上ドローンを自律航行させたい航路を指でなぞることで自動的に航路情報を作成できます。作成した航路情報を4G LTE通信で水上ドローンへ転送することで自律航行が開始し、現在地などの各種情報をスマートフォンの画面上で確認することができます。

 

 

 

 

■水素燃料電池の概要
水上ドローンに搭載する水素燃料電池は飛行ドローン向け製品を採用しました。小型・軽量ながら最大連続出力800Wの性能があり、水上ドローンへ十分な電力を供給することが可能です。水素ガスボンベにはカーボンFRP(Fiber Reinforced Plastics)容器を採用することで軽量化を図り、同重量のリチウムイオン電池の4倍以上の電力を貯蔵できます。

 

 

 

 

今回、搭載した水素燃料電池と水素ガスボンベのシステム重量は約10kg(ケース重量除く)でありながら、4kWhに相当する電力を貯蔵できます。リチウムイオン電池の場合、4kWhのシステム重量は40kgとなり、水素燃料電池システムの約4倍の重量となります。

 

 

■各機関の役割

●KDDI総合研究所
4G LTEに接続して遠隔制御可能な水上ドローンの開発、スマートフォンを用いた自律航行航路の作成システムの開発、水素燃料電池を電源とする開発

 

●大阪府立大学
数値解析などを用いた、水上ドローンが沿岸部を航行する際に必要とする仕様の策定

 

 

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。