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5Gを4G LTEと同一周波数帯内で共存させる新たな技術の実証実験に成功

~周波数を有効に利用し高品質なサービスが提供可能に~

2018年9月4日
株式会社KDDI総合研究所

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中島康之、以下「KDDI総合研究所」)は、第5世代移動通信方式(以下、5G)と第4世代移動通信方式(以下、4G LTE)を同一周波数帯内で共存させる新たな技術(以下、本技術)の実証実験に成功しました。本技術を使うことで、帯域分割のように既存システムの帯域を削減することなく、状況に応じ4G LTEと5Gを同一周波数帯内に柔軟に割当てることが可能になり、周波数利用効率が最大化されます。これにより周波数移行の過渡期において、どちらかのシステムにユーザが偏ることにより発生する通信品質劣化を防ぎ、ユーザの通信品質を最適化することができます。

 

 

 

図1. 5Gを4G LTEと同一周波数帯域内共存(イメージ図)

 

 

【背景】
5Gでは低遅延・高信頼性という特性を活かし、コネクティッドカーのような広いエリアを必要とするサービスが検討されています。広いエリアがカバーできる低い周波数帯を使用するためには、現在4G LTEで使用している周波数を5Gへ移行する必要があります。周波数移行の1つの方法として既存システム(ここでは4G LTE)の帯域を削り、新しいシステム(ここでは5G)に帯域を割り当てる方法(帯域分割)がありますが、システム間でユーザ数の偏りがある場合などは周波数利用効率が悪くなり、ユーザの最大スループットが低下するなどの問題がおきるため、周波数帯域内での柔軟なシステム間の共存が必要となります。
また、4G LTEと5Gの共存は3GPP Release15(注1)で議論が行われ、共存を実現するための仕様が策定・定義されましたが、その実証はされていませんでした。

 

【今回の成果】
この度、KDDI総合研究所は3GPP Release15にて策定された仕様に基づいて4G LTE周波数帯域内に5Gを共存させることが可能であることを国内で初めて実証しました。シールドルーム内で実験システム(注2)を使い実際に4Gと5Gの無線を出力し、Release15で策定された仕様に基づいて4G LTEと5Gを共存させて実証しました。しかしながら、策定された仕様の範囲内では、4G LTEの参照信号と5Gの同期信号がぶつかることにより発生する干渉(以下、システム間干渉。図3参照)が確認されました。
そこで、システム間干渉の原因となる4G LTEの参照信号を抑制する手法を新たに考案し、4G LTEの既存機能であるMBSFN機能(注3)を応用することでシステム間干渉を抑制可能であることを実証しました。(表1参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

【今後の展望】
KDDI総合研究所は、実用化に向け想定される様々な課題について実証実験をおこない、本技術の更なる性能向上を図り、標準化活動を含め研究開発を進めていきます。

 

【用語説明】
(注1)5Gの詳細仕様検討が行われ、5Gの初版仕様が策定されたRelease
(注2)Rohde & Schwarz社製 SMW200A / FSW8
(注3)Multicast Broadcast Single Frequency Networkの略。3GPP Release9で策定され、1つの基地局が複数の端末と同時にデータ通信する「マルチキャスト方式」で使用するチャネル。MBSFNサブフレームは制御信号領域を除いて参照信号を止めることができる。
(注4)Error Vector Magnitudeの略。変調または復調性能を測定したもので、信号品質を測る指標の1つ。数値が小さいほど品質が良いことを示す。

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。