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「5G」×仮想化基地局のスライシング技術を開発

~要求に応じて最適なネットワークを構築する次世代技術の実証に世界で初めて成功~

2018年5月21日
株式会社KDDI総合研究所

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中島康之、以下「KDDI総合研究所」)は、仮想化技術を用いた基地局のスライシング技術(注1)を開発し、サービスの要求に応じて最適なネットワークを構築する次世代技術の実証に、プロトタイプの装置を用いて世界で初めて成功しました(注2)。これにより、次世代移動通信システム5G(以下「5G」)時代に期待されるIoT、超高速、超低遅延などの多様なサービス実現に向けて、サービスの迅速な導入やお客様のニーズに合わせた柔軟な運用が実現され、高品質で安定したネットワークの提供が可能となります。
本成果は、5月23日(水)~5月25日(金)に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2018」にて展示します。

 

 

図1 仮想化基地局スライシング技術イメージ

 

【背景】
「5G」では、大規模なセンサ端末からの情報収集を行うIoTサービスや、4K/8Kなどの高精細映像を伝送する超高速通信、工場内における遠隔制御のため超低遅延サービスなど要求品質の異なるさまざまなサービスが検討されています。そこで、さまざまなサービスの異なる要求品質に対応するために、基地局の機能(注3)を仮想化しソフトウェアで制御する技術が検討されています。「5G」の規格を策定する標準化機関である3GPP等では、仮想化と併せてアンテナサイトと収容局に配置する基地局機能を見直す検討を進めていますが、基地局の機能をそれぞれのサービスの要求品質にきめ細かく対応させた基地局スライシングはこれまで実証されていませんでした。

 

【今回の成果】
この度、KDDI総合研究所は、仮想化のメリットを最大限に活用し、vBBU(注4)が担う基地局機能をサービスに応じて柔軟に選定するだけでなく、vBBUを最適に配置する基地局スライシング技術を開発しました。vBBUの配置場所はアプリケーションに与える遅延量や収容端末数等のネットワーク性能と強く関係しており、その最適化により「5G」時代に想定される多様なサービスの要求品質にきめ細かく対応することが可能となります。さらに、Cavium社(NASDAQ:CAVM)(本社:アメリカ合衆国カリフォルニア州 サンノゼ、CEO:Syed Ali)と協力してオープンソース(注5)を用いたプロトタイプ装置を開発し、サービスの要求に応じて最適なネットワークを構築する次世代技術の実証に成功しました(図2)。実証では、IoTサービスとしてセンサデバイスの通信(スライス1)とブロードバンドサービスとしてビデオストリーミング送信(スライス2)の2種類を使ったデモを行い、スライス間で互いに干渉することなく動作可能であることを確認し、実現性を示しました。
スライスはソフトウェア制御により容易に設定・変更できるため、新規サービスの迅速な導入やお客様のニーズに合わせた柔軟な運用が実現され、高品質で安定したネットワークの提供が可能となります。

 

 

図2 仮想化基地局スライシング技術の概要

 

【今後の展望】
KDDI総合研究所は、今回開発したプロトタイプ装置を拡充し、サービスに応じて自動的に基地局機能の配置および選択を可能とする機能を追加して、実用化に向けた研究開発や標準化を進めていきます。

 

【用語解説】

 

注1 スライシング技術:サービスに応じて論理的にネットワークを分割すること
注2 KDDI総合研究所調べ。今回提案した仮想化基地局スライシングのコンセプトとそれをプロトタイプ装置で実証した点が世界初
注3 基地局の機能:基地局は無線制御装置であるBBU(Baseband Unit)と無線送受信装置であるRRH(Remote Radio Head)により構成される。基地局全体としては、信号処理/再送制御/無線リンク制御/パケット処理などの一連の機能(RF, Layer 1~3)が実装されている。
注4 vBBU:virtualized Baseband Unit
注5  M-CORD:Mobile-Central Office Re-architected as a Datacenter

 

【商標について】
CORDはOpen Networking Foundationの登録商標です。

 

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