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エッジコンピュータを活用した大容量データの通信制御機能の実証実験に成功

~コネクティッドカー時代を見据えたモバイルネットワークの機能拡充に向けて~

2018年2月23日
株式会社KDDI総合研究所

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中島康之、以下「KDDI総合研究所」)は、今後普及が想定されるコネクティッドカーからの大容量データの優先度をエッジコンピュータ(MEC)(注1)で判断して通信制御する機能を開発し、運転支援に関わる優先度の高いデータをリアルタイムにクラウドへ送信する実験に成功しました。本実験は、ETSI ISG MEC(注2)における標準化活動の一環で、その公式PoC(注3)として進めており、MEC の標準化API(注4)がコネクティッドカー分野においても有用であることを実証しました。
本成果は、2月26日(月)~3月1日(木)にスペインのバルセロナで開催される「Mobile World Congress(MWC)2018」(Hewlett Packard Enterprise社ブース内、Hall 3 Stand 3E11)(注5)にて展示します。

 

【背景】
近年、IT技術の進化と共に、生活の利便性向上の為、身近な機器がネットワークへ接続されてきています。自動車についても、運転支援や車両メンテナンス情報の受配信、車内でのエンタテイメント利用など、モバイルネットワークに常時接続した“コネクティッドカー”が普及していくと考えられています。更に、将来のコネクティッドカー時代において、車両内の各種センサデータやLiDAR(注6)で取得した点群データ、車載カメラ画像等のデータが、モバイルネットワークを通じて、クラウド側へ送信され、運転支援等に必要なデータとして使われることが想定されます。このようなコネクティッドカーが増加すると、車両が渋滞するのと同様にモバイルネットワーク内も通信量の増加によって、渋滞の様な状況が発生し、その結果、運転支援等に関わり、優先度が高くリアルタイム性が要求されるデータの送信遅れを引き起こす可能性があります。

 

【今回の成果】
この度、KDDI総合研究所は、コネクティッドカーからの大容量データをMECで判断して通信制御する機能を開発し、日本ヒューレット・パッカード株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役社長:吉田仁志)のサーバとSaguna Networks Ltd.(本社:イスラエル、CEO:Lior Fite)(注7)のMECプラットフォーム上に実装して、優先度の高いデータをリアルタイムに送信可能とする実験に成功しました。本機能の実装では、同プラットフォームに実装されているETSI ISG MECの標準化APIにより、モバイルネットワークの通信の利用状況を把握し、その先に発生するネットワークの負荷を高精度に予測することに成功しました。この予測結果に基づき、開発したMECの通信制御機能がコネクティッドカーからのデータの送信可否を判定し、優先度の高いデータはリアルタイムに送信させ、優先度の低いデータは送信を遅らせるようにします。
これに加え、交通工学の考え方を取り入れ、個々の車両だけでなく、複数の車両を一つの集団(車群)として捉え、車群内で冗長なデータ送信を抑制する通信制御機能を考案しました。これらの制御機能により、車群の先頭車両を判定し、前方の道路状況の画像データなどについては、先頭車両からの送信のみ優先させることによって、実験では8割のデータ通信量が抑制され、リアルタイム性の必要なデータ送信は性能を維持できることを確認しました(注8)。

 

図1 開発したMEC上の通信制御機能によるデータ送信の制御イメージ

 

 

【今後の展望】
KDDI総合研究所は、今回開発した拡充機能や、5G以降の無線システムの活用も考慮しながら、将来のコネクティッドカー時代に適したモバイルネットワークの実用化に向けて、研究開発を進めていきます。

 

 

 

(注1)MEC(Multi-access Edge Computing):ユーザに近いモバイルネットワーク内でデータ処理等をする技術
(注2)ETSI(European Telecommunications Standards Institute):欧州電気通信標準化機構
(注3)公式PoCの詳細
(注4)API(Application Programming Interface):ソフトウェア間でデータ等をやり取りする際の取決め
(注5)Hewlett Packard Enterprise社ブースの詳細
(注6)LiDAR(Light Detection and Ranging):レーザ光を用いて物体までの距離等を測定する技術
(注7)Saguna Networks Ltd.:イスラエルを拠点とするMEC技術に特化したベンダー
(注8)実験では、車両からアップロードされるデータ通信量について、「車群判定の処理をしなかった場合」と「車群判定の処理をした場合」の比較を行い、「車群判定の処理をしなかった場合」に比べて、「車群判定の処理をした場合」にデータ通信量が8割抑制されることを確認

 

 

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