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世界記録を大幅に更新!光ファイバー1芯で毎秒10ペタビットの伝送実験に成功

~伝送速度も「京」の時代に!ポスト5G時代のモバイル通信を支える技術に寄与~

2017年9月22日
株式会社KDDI総合研究所
住友電気工業株式会社

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中島康之、以下「KDDI総合研究所」)、住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治、以下「住友電工」)は、光ファイバー1芯で伝送することができる伝送容量の世界記録(毎秒2.15ペタビット)を大幅に更新し、世界最大となる毎秒10.16ペタビット(注1)の光ファイバー伝送実験に成功しました。これは114の空間多重を可能とするマルチコアマルチモード光ファイバー(注2)技術を用いています。伝送容量10ペタビットは、1秒でブルーレイディスク2.5万枚分(50GB/両面)のデータを伝送できるスピードであり、また、1億人が同時に100メガビットの通信を可能とするスピードです。5G以降の時代には、無線技術だけでなく、それを支えるネットワーク技術や光ファイバー伝送技術の革新は不可欠です。この技術は、より低遅延で高速な5G以降のモバイル通信システムを支え、“新しい体験・サービス”をお客様に提供するキー技術として期待できます。

 

【背景】
モバイル通信ではこれからIoTやコネクティッドなど多種多様なサービスを安心安全に収容するために、そのバックホールをささえる光ファイバー通信の収容能力(伝送容量)を十分に拡大することが不可欠です。従来の光ファイバー((単一コア)単一モードファイバー)通信では、光信号を波長軸上に複数「波長多重」することにより伝送容量を拡大してきましたが、入力できる光パワーの限界や光ファイバー中での信号間の干渉などにより、実質的な伝送容量は毎秒約0.1ペタビットが限界と言われています。近年、その限界を打破する技術として、光ファイバーの中に複数のコアを設けるマルチコアファイバーや複数の伝搬モードを活用するマルチモードファイバーに代表される「空間多重」技術が世界的に進展し、これまで22の空間多重が可能な22コアファイバーを用いて、毎秒2.15ペタビットまでの容量拡大が報告されていました(注3)。

 

【今回の成果】
これまで空間多重数が100を超えるマルチコアマルチモード光ファイバーも開発されてきましたが、伝送容量は毎秒2ペタビットが最大でした(注4)。単一コアファイバーの最大伝送容量(毎秒0.1ペタビット)×空間多重数(100以上)からは毎秒10ペタビットの可能性があると考えられます。そこで、今回、光ファイバーの高性能化(注5)を図る(住友電工)と共に、実際に10ペタ伝送を評価するための信号を用意し、全チャネルを効率的に評価する手法を導入して伝送特性を評価することで、伝送容量毎秒10.16ペタビット(伝送距離11.3km)を達成しました(KDDI総合研究所)。
この研究によりマルチコアマルチモード光ファイバーを用いた10ペタ超の超大容量光通信システムの実現可能性を示しました。今後は、マルチコアファイバーやマルチモードファイバーの適用領域を見極めながら、5Gを含め将来の多様で大容量なデータ通信需要に対応すべく光ファイバー伝送基盤技術の発展に貢献していきます。
今回の成果は9月17日~21日にスウェーデン・イエテボリで開催される光通信技術に関するヨーロッパ最大の国際会議European Conference on Optical Communications (ECOC)2017のポストデッドライン論文(注6)として報告しました。

 

なお、本研究開発の一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:徳田英幸、以下「NICT」)の高度通信・放送研究開発委託研究「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」(i-FREE2)(平成25年度~平成29年度)の成果です。

 

 

 

図1 今回のマルチコアマルチモード光ファイバー伝送の概要

 

 

 

図2 これまでの実験結果と今回の成果の比較

 

 

<参考・用語解説>

 

(注1)世界最大の10.16ペタビット伝送
今回の実験では739波長にシンボル速度12ギガの信号を偏波多重64QAM変調(毎秒144ギガビット)または偏波多重16QAM変調(毎秒96ギガビット)し、その波長多重信号を114の光の通り道(6モード19コアファイバー)を使って空間多重して伝送を行いました。誤り訂正として3種類の符号(25.5%、20%、12.75%オーバヘッドの符号)を想定することで、総伝送容量は、毎秒10.16ペタビットとなりました。なお、10ペタは1京(10の16乗)。10ペタ(P)ビット/秒=10,000テラ(T)=10,000,000ギガ(G)
 

 

(注2)100以上の空間多重数を持つマルチコアマルチモード光ファイバー
1本の光ファイバーに複数のコアを設けて異なる信号を多重伝送するマルチコアファイバー伝送方式と、各コアに複数の伝搬モードを設けて異なる信号を多重伝送するマルチモードファイバー伝送方式を組み合せて用いることができる光ファイバーであり、コア数とモード数の掛け算(=空間多重数)が100を超える光ファイバー。今回はコア数が19、モード数が6モードの光ファイバーを用いました(空間多重数は114)。
 

 

(注3)毎秒2.15ペタビット伝送の研究開発例

 

(注4)マルチコアマルチモードファイバーを用いた毎秒2ペタビット伝送の研究開発例
2015年10月1日プレスリリース「光ファイバーで毎秒2ペタビット(Pbps)の超大容量データ伝送に成功  ~ 従来の世界最大容量の約2倍を実現! ~」

 

(注5)光ファイバーの高性能化
具体的には、これまで発表されている空間多重数100を超えるマルチコアマルチモード光ファイバーに比べて、使用帯域をCバンドだけでなく、C+Lバンドに広帯域化し、当ファイバーの重要なパラメータであるモードごとの伝搬損失差やモード間の遅延差等を小さく抑えることに成功しました。また、コア間のクロストークを-50dB以下に抑えながらガラス径を極力小さくする高密度化も実現しています。

 

(注6)ポストデッドライン論文
一般論文投稿締め切り後(ポストデッドライン)に受け付けられる論文であり、会議期間中に論文選考が行われ、高い評価を受けた研究成果のみ報告の機会を得ることができます。

 

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