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光ファイバ伝送実験において世界最高の周波数利用効率を達成 ~空間光多重技術の改良により、一般的な光ファイバより100倍以上大容量な新しい光ファイバの伝送実験に世界初成功~

2015年3月26日
株式会社KDDI研究所

 株式会社KDDI研究所 (代表取締役所長: 中島 康之、以下KDDI研究所) は、一般的な光ファイバより100倍以上大容量化できる新しい光ファイバを開発し、100を超える空間光多重伝送実験に世界で初めて成功しました。空間光多重伝送方式 (*1) は、1本の光ファイバに光の通り道 (異なるコアや異なる伝搬モード (*2) を利用) を複数設けることにより、光ファイバ1本あたりの伝送容量を飛躍的に拡大できる次世代光伝送方式です。これまで光の通り道の数 (空間多重数) は最大でも数十個程度でしたが、今回、光の通り道の間で生じる混信 (クロストーク) を極力小さくすることで、世界で初めて空間多重数が100を超える伝送実験(空間多重数:114、伝送距離:9.8km)に成功しました。さらに、本実験では従来よりも約40%向上した世界最高性能の周波数利用効率 (*3) 345 bit/s/Hzを達成しました。これは現在の一般的な商用システムの約170倍に相当します。本成果は、2015年3月26日 (米国時間) に開催される光ファイバ通信国際会議 (OFC2015) での発表を予定しています。なお、本研究の一部は、独立行政法人情報通信研究機構 (理事長: 坂内 正夫、以下NICT) の高度通信・放送研究開発委託研究「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」 (i-FREE2) (平成25年度~平成29年度) の成果です。

 

【背景】

 モバイルトラヒックの急増やクラウドコンピューティングの急速な発展により、光ファイバを流れるトラヒック量は増大しており、2025年以降には1本の光ファイバによって送ることができるデータ容量の限界に達するといわれています。その抜本的な解決策の一つして、空間光多重伝送方式 (*1) が広く世界的に検討されています。空間光多重伝送方式は、空間多重数つまり光の通り道の数を増やすことにより、基本的にはその数分だけ伝送容量を拡大することが可能になります。しかし、その数はこれまで最大でも数十個程度でした。これは髪の毛程度の太さの光ファイバの中により多くの光の通り道を作ろうとすると、光の通り道の間で大きな混信 (クロストーク) が生じるため、高い伝送品質を保ちながら空間多重数を増加させることは非常に困難でした。

 

【今回の成果】

 KDDI研究所は、今回、協力会社とともに、1つの波長の6つの伝搬モード (*2) に異なる信号を多重 (または分離) することが可能な6モード多重 (分離) 器、各多重器から出力される6モード多重信号をマルチコアファイバの19個のコアそれぞれに入力することが可能な入出力デバイス、そして、1つのコアに6つの伝搬モードを伝送可能な19コア光ファイバを新規に開発しました。図1に新しい6モード19コア光ファイバの断面写真と今回使用した6つの伝搬モードを示します。コア間や伝搬モード間の“混信”をファイバ構造や部品構成を特殊設計することにより、その発生を極力抑えることに成功し、コア数×モード数を従来よりも3倍以上になる、空間多重数114を達成しました。さらに、既存システムの波長多重技術と偏波多重技術を、この空間光多重技術と組み合わせることで、システム全体の周波数利用効率 (*3) を世界最高の345 bit/s/Hzまで向上しました。

 

 

 加えて、“混信”を抑えたシステムの実現により、伝搬モードを分離するための信号処理 (MIMO: Multiple Input Multiple Output (*4)) 負荷を従来の約1/2に低減することに成功しました。これは、本システムの実現性の向上とシステム全体の消費電力の低減が期待できます。

 

【今後の展望】

 マルチコア・マルチモード光ファイバの性能向上と更なる信号処理負荷の軽減を図ることにより、更なる伝送距離の延伸化を進め、実用化に向けて前進させます。なお、本実験結果は、米国・ロサンゼルスで開催される光ファイバ通信国際会議 (OFC 2015、3月22日 (日) ~3月26日 (木)) において、ポストデットライン論文として発表予定です。

 

 

 詳細は参考資料をご参照ください。

 

以上

 

 

 

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