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100ギガビット級コア・メトロ・アクセス光ネットワークの Software Defined Transport Network技術による相互接続に成功 ~将来のデータセンター間ネットワークの統合制御実現に向けて前進~

2014年5月21日
株式会社KDDI研究所
三菱電機株式会社
独立行政法人情報通信研究機構
慶應義塾大学
イクシアコミュニケーションズ株式会社
株式会社東陽テクニカ

 株式会社KDDI研究所(以下KDDI研、代表取締役所長:中島康之)、三菱電機株式会社(以下三菱電機、執行役社長:柵山正樹)、独立行政法人 情報通信研究機構(以下NICT、理事長:坂内正夫)、慶應義塾大学(塾長:清家篤)、イクシアコミュニケーションズ株式会社(以下イクシア、代表取締役:村上憲司)、株式会社東陽テクニカ(以下東陽テクニカ、代表取締役社長:五味勝)の6者は、個々に構築した毎秒100ギガビット級のコア、メトロ、そしてアクセスの光ネットワークを、SDN(Software defined networking)※1の技術を用いて相互接続する仮想光ネットワーク構築実験に成功しました。本技術は、データセンター間をつなぎ、広域クラウドを構成する大容量通信ネットワーク技術への応用が期待できます。

 本実験の内容は、5月22日~23日に武蔵野市で開催される国際会議10th International Conference on IP + Optical Network(iPOP2014)にて相互接続デモンストレーションとして公開いたします。

 

【背景】

 クラウドビジネスの台頭やビッグデータの活用により、データセンター内外を流れる情報量は飛躍的に増加しており、2020年には2012年と比べて約8倍以上になると予想されています。そのため、データセンター内外のネットワークには、今後毎秒100ギガビット級の光ネットワーク機器の導入と、通信品質や帯域等の異なる複数の多様なサービスを一つの通信事業者のネットワークに効率的に収容するためのネットワーク資源を分離し管理できる機構が必要です。一方、多数の装置および複数のネットワークから構築されるネットワークが今まで以上に高速かつ複雑になると、運用コストの増大が課題となります。昨今、運用コストの低減のため、そのような複雑なネットワークをSDN/OpenFlow※2等オープンソースのインタフェースにより一元的に集中管理する技術が注目されていますが、これまで、多数の装置および複数の異なる方式のネットワークからなる大規模で大容量な光ネットワークを単一の制御装置により一元的に集中管理することは困難でした。

 

【今回の成果と公開デモンストレーションの内容】

 コア・メトロ・アクセスの各光ネットワーク※3(図1参照)に配備された各ネットワーク制御装置が、自らが管理する物理ネットワークを簡易的な論理ネットワークとして統合制御装置(SDNコントローラ)に情報提供することで、毎秒100ギガビット級トランスポートネットワークを含む大規模ネットワークを一元的に制御できるSoftware Defined Transport Networkを、6者は相互接続実験により世界で初めて確認しました。

 5月22日~23日に開催される国際会議iPOP2014の公開デモンストレーションでは、毎秒100ギガビット級の光ネットワーク機器(試作プロトタイプ)を用意し、模擬データセンター間に仮想光ネットワークが構築できることをお見せします。データセンター間を接続する光ネットワークとしては、毎秒100ギガビットの波長多重光伝送装置※4(三菱電機提供)と毎秒100ギガビット級の光パケット・光パス統合スイッチング装置※5(NICT提供)をメトロコア光ネットワークとして構築します。模擬データセンター(イクシア、東陽テクニカ提供)とつながるアクセス部分には、エラスティック性※6を有する次世代光アグリゲーションネットワーク※7のプロトタイプ機器※8(慶應義塾大学提供)を設置し、異なるタイプの装置で構築された光ネットワークをSDN/OpenFlowベースの統合制御装置※9(KDDI研提供)で制御します。統合制御装置は、データセンターのユーザーからのリクエスト(帯域要求)に応じて、個々の仮想光ネットワークを構築します。これらは、毎秒100ギガビット級トランスポートのSDN/OpenFlow制御の初の公開実験※10です。

 

 

図1 データセンター間を接続する光ネットワーク構成

 

用語解説

 

 

※1:ネットワーク構成をソフトウェアで動的に設定・変更できるネットワーク技術です。

 ここでは、光トランスポートネットワークをソフトウェアで動的に設定変更する技術として、Software Defined Transport Network(SDTN)という言葉を使用しています。

 

※2:OpenFlowはOpen Networking Foundation(ONF)の登録商標です。

 

※3:アクセス・ネットワークの情報がメトロ・ネットワークに集められ、メトロ・ネットワークを集約してコア・ネットワークが構成されます。

 

※4:1本の光ファイバ上で波長多重した光信号を伝送する光通信装置です。

 今回の相互接続実験で使用している装置は1波長あたり毎秒100ギガビット、光ファイバ1本あたり毎秒数テラビットの伝送が可能です。本研究開発の一部は、平成21年度から平成23年度に実施した総務省の委託研究「超高速光伝送システム技術の研究開発(デジタルコヒーレント光送受信技術)」および「超高速光エッジノード技術の研究開発」の成果を利用しています。

 

※5:高精細映像伝送や遠隔医療、TV会議など高品質な要求をするエンドユーザーに対しては光パスを提供し、Webアクセスや電子メールの転送、超大量端末からのセンサーデータなどの転送には、光パケット交換を用いる等、用途にあわせた通信路を提供する光装置です。

 

※6:エラスティック性とはここでは光パスの信号帯域を要求帯域に応じてゴムのように伸縮自在に変更可能な性質を言います。

 

※7:アグリゲーション網は、地域的に配備されサービス毎に存在するアクセス網と通信局間を接続するコア網との間に存在し、アクセス網からのトラヒックをコア網に向けて集約するサービス共通の集線網です。

 次世代光アグリゲーションネットワークでは、Fiber to the Home(FTTH)技術を拡張して、アグリゲーション網をアクセス網と統合してアクティブ光分配網として光化部分を拡大し、ネットワーク仮想化技術やSDN技術によるサービス対応型統合網の実現を目指しています。

 

※8:慶應義塾大学のプロトタイプ機器は、NICTの委託研究「エラスティック光アグリゲーション技術の研究開発」の成果を利用しています。

 

※9:KDDI研の統合制御装置(プロトタイプ)は、総務省の委託研究「スライサブルな超100Gイーサネットシステムを実現するための大規模プログラマブル光ネットワークの研究開発」の成果を利用しています。

 

※10:本実験は、けいはんな情報通信オープンラボ研究推進協議会・相互接続性検証ワーキンググループ(主査:慶應義塾大学理工学部教授 山中直明)で推進する「Multi-Technology Transport Network制御技術 研究開発プロジェクト」の一環として実施するものです。

 

 けいはんな情報通信オープンラボ研究推進協議会は、産学官連携によるICT分野の研究開発を推進することにより関西経済の発展に資することを目的とする協議会です。相互接続性検証ワーキンググループは、同協議会の傘下のワーキンググループであり、新世代の光ネットワークの相互接続性に関して、様々な提案や検証を行っている、KDDI研、三菱電機、NICT、慶應義塾大学を含む9機関からなる共同研究グループです。

 

 

 

参考資料

 

 

【国際会議iPOP2014概要】

日 時:2014年5月22日(木)~23日(金)

会 場:東京都武蔵野市緑町3-9-11 NTT武蔵野研究開発センタ(入場無料・当日受付可)

Web: http://www.pilab.jp/ipop2014/

*デモンストレーションは展示開催期間中(22日12:00~18:00、23日10:00~15:00)常時ご覧いただけます。

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。