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KDDI、KDDI総合研究所、東京医科歯科大学、スマホ・ネット依存、ゲーム行動症の改善へ「サイバー精神医学講座」開設

2023年10月2日
KDDI株式会社
株式会社KDDI総合研究所
国立大学法人東京医科歯科大学

KDDI株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 CEO:髙橋 誠、以下「KDDI」)、株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下「KDDI総合研究所」)、国立大学法人東京医科歯科大学(所在地:東京都文京区、学長:田中雄二郎、以下「東京医科歯科大学」)は2023年10月1日、スマホ・ネット依存(注1)やゲーム行動症(Gaming Disorder)(注2)の改善に向けた研究開発を進める「サイバー精神医学講座(注3)」(以下「本講座」)を開設しました。本講座を通じて、スマホ・ネット依存、ゲーム行動症についての実態解明、診断や治療を支援するシステム(プログラム医療機器)の検証を行い、将来の実用化を目指します。

 

本講座開設にあたり、東京医科歯科大学 精神科 髙橋英彦主任教授は「ゲーム行動症は疾患概念が確立したばかりで、いわゆるスマホ依存やネット依存とともに、社会から十分理解されておらず、本人や家族も自覚していない場合が多いとされています。また、スマートフォンやインターネットは生活に欠かせないものにもなっており、単に禁止するということは現実的ではありません。そこで、客観的な診断法や科学的で有効な治療法の開発が、疾病の理解、予防、啓蒙にも立ち返って有益になるものと期待しております。これまでもKDDI、KDDI総合研究所とは共同研究を行い、研究用アプリでスマートフォンの利用状況のログを記録し、人工知能技術を用いた解析により、通常の聞き取りではわからなかったゲーム行動症の増悪や回復のパターンなども明らかになりつつあります。これらの成果をさらに発展させ、より汎用性の高い診断法や治療法開発を目指したいと思います。」と述べています。

 

■ 本講座開設の背景
・KDDIらが実施したこれまでの調査(注4)では、コロナ禍でゲーム行動症やネット依存の傾向を示す割合が従来の1.5倍以上に増加しています。以前から社会課題として認識されていましたが、さらに深刻な状況になっています。
・スマホ・ネット依存は疾患としてまだ公式に認定されていませんが、ゲーム行動症は2022年1月にWHO(世界保健機関)が発行した「ICD-11(国際疾病分類の第11回改訂版)」に正式採用された新しい疾患で、有効な治療方針はまだ確立されていません。
・近年、診断や治療などをデジタル化するプログラム医療機器の実用化が期待されています。2023年6月16日に閣議決定された内閣府「規制改革実施計画」の中に「プログラム医療機器(SaMD)等の開発・市場投入の促進」が含まれるなど、プログラム医療機器の社会実装を促進する環境が整いつつあります。

 

KDDIとKDDI総合研究所は、青少年のスマートフォン・インターネットの利用が長時間化し日常生活に支障をきたす「スマホ依存」に関する調査・研究を2016年から行ってきました。また、東京医科歯科大学はネット依存の専門外来を2019年度に立ち上げ、ゲーム行動症の方を中心に入院治療、外来治療、当事者プログラム、家族支援プログラムなどネット依存の診療に取り組んできました。このような背景から、3者は共同研究を2020年から開始し、ネット依存外来の患者に対してのアンケート調査や研究用アプリでの利用状況の記録を通して、スマホ・ネット依存、ゲーム行動症の解明を進め、研究成果を活用してゲーム行動症患者の診断や治療用アプリの実用化を目指し臨床研究などを進めてきました。

 

今回3者は、既存の共同研究を発展させる形で本講座を東京医科歯科大学の中に立ち上げ、スマホ・ネット依存、ゲーム行動症の診断や治療に資するプログラム医療機器の実現を通じて、社会の健康促進を目指します。

 

本講座の内容など詳細は別紙をご参照ください。

 

 

 

<別紙>

 

■ 本講座について
1.概要

スマホ・ネット依存、ゲーム行動症などの行動嗜癖を対象にスマートフォンアプリを用いたシステムのプログラム医療機器申請に関わる臨床研究を実施します。あらかじめ同意を得た通院患者を対象に日常的な行動情報を収集し、行動ログを医療情報と比較することで行動嗜癖に関する病態を解明することに加え、診断および治療支援に用いることでシステムが治療に関連するアウトカム指標(有効性を評価する指標)の改善に寄与することを検証します。

 

 

2.役割

 

KDDI
KDDI総合研究所
・診断および治療に関するシステムの提供と効果検証の実施
・プログラム医療機器に関する各種申請など
東京医科歯科大学 ・参加者募集、参加者からの問い合わせ対応、倫理審査の書類作成および実施
・アウトカム指標の検証
共通 ・計画の立案、臨床研究の運営、対外発表

 

 

3.東京医科歯科大学 担当教員の紹介

 

髙橋英彦(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学 教授)
1997年に東京医科歯科大学卒。2005年同大で博士(医学)取得。2008年California Institute of Technologyに留学。2010年から2019年まで京都大学 精神医学教室に所属し、2019年から現職。日本学術振興会賞、ベルツ賞(一等)、日本アルコール・アディクション医学会賞、日本神経科学会奨励賞などを受賞。脳画像を用いて、情動・意思決定の神経科学から精神神経疾患の病態研究、最近は人工知能技術を活用した診断法、治療法開発まで学際的な研究を展開している。

治徳大介(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 サイバー精神医学講座 ジョイントリサーチ講座准教授)
2001年に筑波大学卒。2011年に東京医科歯科大学で博士(医学)取得。2011年から同大学助教、2020年から同大学講師、2023年10月から現職。2019年からネット依存外来を立ち上げ、ゲーム行動症の診療や病態研究を行っている。

小林七彩(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 サイバー精神医学講座 ジョイントリサーチ講座助教)
2013年に宮崎大学卒。2022年より東京医科歯科大学助教、2023年10月から現職。2019年からネット依存外来を立ち上げ、ゲーム行動症の診療や病態研究を行っている。

 

 

■ KDDIのヘルスケア事業について
KDDIグループは、KDDI VISION 2030「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を掲げ、人生100年時代における健康的な生活の実現を支援しています。
先端テクノロジーを活用した健康・予防から医療までを支えるトータルヘルスケアアプリ「auウェルネス」の提供に加え、企業・自治体・医療機関をはじめとしたパートナーとの連携やデータの活用を通じて健康寿命の延伸を目指します。

 

 

(参考)
■ これまでの「スマホ依存」に対する取り組み

2016年3月4日 KDDI総合研究所ニュースリリース
中高生のスマホ依存を改善するホームアプリ 「勉強うながしホーム」を開発
~勉強モードへスイッチオン~

 

2019年7月30日 KDDI総合研究所ニュースリリース
ふじみ野市でのICTを活用した住民参加型実証実験の開始について
~人がつながる豊かで住み続けたいまちを目指して~

 

2020年7月10日 KDDI、KDDI総合研究所ニュースリリース
KDDI、KDDI総合研究所、ATR、XNef、脳神経科学とAIを活用した「スマホ依存」に関する共同研究を開始
~「スマホ依存」の実態調査・解明と、2024年度中の改善・予防スマートフォンアプリの実用化を目指す~

 

2020年8月25日 KDDI、KDDI総合研究所ニュースリリース
KDDI、KDDI総合研究所、東京医科歯科大学、ネット依存外来の患者を対象とする「スマホ依存」の共同研究を開始
~スマートフォン利用状況を測る客観的な指標を定義し、医療機関での治療などに活用~

 

2021年10月12日 KDDI、KDDI総合研究所ニュースリリース
「スマホ依存」改善に向け特定臨床研究を開始
~2024年度以降の医療現場でのアプリ実用化を目指して研究を推進~

 

 

 

(注1)スマホ依存とは、疾患ではないが、スマートフォンの過剰な利用により、体力低下、成績が著しく下がるなど、普段の日常生活に支障をきたしているにも関わらず、使用がやめられずスマートフォンを使用していないとイライラし落ち着きがなくなってしまう状態のことを指します。ネット依存はスマホ依存同様、日常生活においてインターネットの使用を優先してしまい、使う時間や方法を自分でコントロールできない状態を指します。
(注2)ゲーム行動症(ゲーム障害)とは、ゲーム時間をコントロールできない、他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを優先してしまうなどの症状があり、健康や人間関係など、社会生活への影響を多大に与える疾患です。
(注3)サイバー精神医学講座は、東京医科歯科大学内の「ジョイントリサーチ講座」制度の一環となります。研究の進展および充実を図ることを目的に、研究機関または企業などの学外機関から研究費および必要に応じ研究者を受け入れることにより、東京医科歯科大学と学外研究機関などが協力し、特定の研究内容について一定期間継続的に協働して研究を行うものです。
(注4)2021年10月12日 KDDI、KDDI総合研究所ニュースリリース
コロナ禍でスマートフォン利用時間が増加し、ゲーム障害、ネット依存傾向の割合は1.5倍以上増加
~コロナ禍で変化するスマートフォンの利用方法と、スマホ依存などへの影響を調査~

 

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。