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カラーホログラフィック動画像の6DoFストリーミング圧縮伝送に成功

~Beyond 5G/6G時代の新たな映像体験の実現に向けて~

2025年10月14日
株式会社KDDI総合研究所

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:小西 聡、以下 KDDI総合研究所)は、2025年9月25日、映像体験者の姿勢・位置情報の6自由度(以下 6DoF)(注1)表示に対応したカラーホログラフィック動画像のストリーミング圧縮伝送に世界で初めて成功しました(注2)。また、伝送したカラーホログラフィック動画像を再生するためのヘッドマウントディスプレイ(以下 HMD)を開発しました。
これにより、HMDを装着した映像体験者の姿勢・位置に応じたカラーホログラフィック動画像の再生が可能となり、将来は人物の姿勢や動きに重点を置くスポーツレッスンなどへの活用が期待できます。KDDI総合研究所は、今回の成果を用いて、さまざまな利用シーンでのホログラフィーの活用拡大を見据え、多様な分野での活用シーンを想定した実証実験やさらなる研究開発を推進します。

 

 

なお、2025年10月14日から10月17日まで幕張メッセで開催される「CEATEC 2025」の国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))ブース(General Exhibits ホール1、1H008/1H009)でHMDの展示と成果の講演を行います。

 

1.背景
KDDI総合研究所は、高精細映像や3D映像の視聴体験向上に向けた研究開発に取り組んできました。
ホログラフィーは、光の強度・色彩・位相情報をすべて記録し、「実物を目視しているような立体映像」を実現する先端技術です。従来の立体映像技術(注3)は、目や脳に対する負担や疲れなどの課題が挙げられており、より自然で臨場感のある映像体験を実現するホログラフィーの実用化が期待されています。特に、コンピューターを用いて作成される「計算機合成ホログラム(Computer-Generated Hologram、以下 CGH)」の研究開発が盛んに進められています。
KDDI総合研究所は、Beyond 5G/6G時代に期待される未来の映像体験を視野に入れ、ホログラフィーやCGHに関する研究開発も進めています(注4)。

 

2.今回の成果
今回、カラーホログラフィック動画像の6DoFストリーミング圧縮伝送に成功しました。カラーホログラフィック動画像の送信側では、HMDで取得された6DoF情報を随時受信し、映像体験者の姿勢・位置に応じた正しい見え方に対応するCGHの物体光分布(注5)を計算します。受信側では、送信側で計算された物体光分布から干渉縞(注6)を計算して、6DoF情報に応じたカラーホログラフィック動画像を表示(6DoF表示)します。
物体光分布の計算においては、6DoF情報に基づき、映像体験者に必要な物体光分布のみの計算を行うことで、リアルタイムでのストリーミング伝送を可能としました。また、カラーホログラフィック動画像の伝送には、非圧縮で72Gbps、従来の圧縮技術でも12Gbpsの伝送帯域が必要でしたが、今回、2.4Gbps程度への圧縮を実現しています。
今後はBeyond 5G/6Gにおいて多くのユーザが利用可能なビットレートとして想定している1.5Gbps(注7)以下に抑えることを目指します。

 

カラーホログラフィック動画像の6DoFストリーミング圧縮伝送の概要

 

 

また、北海道大学 大学院情報科学院 坂本 雄児 名誉教授ならびに姜 錫 助教の協力を得て、カラーホログラフィック動画像の6DoF表示に対応するHMDも開発しました。KDDI総合研究所は、北海道大学が試作した電子ホログラフィック装置(注8)を基に、光学系に関わる内部構造は維持しながら、電子回路の配置や固定治具を再設計し、頭部への装着を実現するとともにデザイン性を向上させました。なお、HMDの製作には、株式会社アペックス(本社:東京都八王子市、代表取締役:本多 伸彦)の協力を得ました。

 

KDDI総合研究所は今後も、ホログラフィー通信の研究開発を進め、教育や医療、働き方改革など、多様な分野での社会実装を推進するためにパートナーとの連携を強化していきます。

 

本研究成果は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))の「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」での委託研究「Beyond 5G網におけるホログラフィ通信のための高効率圧縮伝送技術の研究開発」(JPJ012368C06801)の一環として行いました。

 

 

 

(注1)頭部の前後左右への傾きや首の動きおよび歩行に追従する6つの自由な動き。
(注2)2025年9月現在、KDDI総合研究所調べ。
(注3)レンチキュラ方式や視線追跡方式などの立体映像技術。
(注4)2022年5月9日報道発表
ホログラフィーのサイズや視域角を維持しながらカラーアニメーション化に成功
~Beyond 5G/6G時代に期待されるメディア体験の実現に向けて~
(注5)物体から反射した光の分布。
(注6)物体から反射した光と、光源からの光が重なり合うことで生じる明暗の縞模様。
(注7)ITU-Rが規定する5G(IMT-2020)の5パーセンタイルスループット(60Mbps)の25倍(帯域幅5倍・帯域効率5倍)であり、同ビットレート以下に抑えることで、Beyond 5Gネットワーク上での伝送も可能になると想定。
(注8)電子ホログラフィックHMD装置の開発

 

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