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KDDI総合研究所と善光会、ARメガネを活用したハンズフリー介護作業支援システムを開発

~実用化に向け介護施設での実証実験を実施~

2021年2月2日
株式会社KDDI総合研究所
社会福祉法人善光会

株式会社KDDI総合研究所(所在地:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下「KDDI総合研究所」)と社会福祉法人善光会(本部:東京都大田区、理事長:梅田 茂、以下「善光会」)は、きめ細かな介護対応の実現を目的に、ARメガネを通して入居者の介護関連情報を表示し、音声で読み上げを行うハンズフリー介護作業支援システム(以下「本システム」)を開発しました。また、本システムを使った実証実験を2020年10月から12月にかけて善光会の介護施設で実施し、介護の現場での作業に役立つことを確認しました。

 

 

 

ハンズフリー介護作業支援システムの構成

 

 

<背景>
介護施設の職員が入居者に対し最適なケアを実践するためには、入居者一人ひとりが今どのような状態にあり、どのようなケアを必要とするのかなどの情報を常に把握しておくことは非常に重要です。介護業界は他業界と比較して人材の流動性が高く、人材が不足しているとも言われており、職員一人が対応する入居者数が増加する傾向にあります。また、入居者には、個人識別用のIDタグ等は装着していないこともあり、入居者一人ひとりにきめ細かな対応を行いより良いサービスを提供するには、ハンズフリーで入居者に関する情報を閲覧できる仕組みが求められています。

 

<今回の成果>
このたび、KDDI総合研究所と善光会は、KDDI総合研究所が開発した顔認識技術及び音声合成技術と、善光会が開発したスマート介護プラットフォーム(注1)を組み合わせ、カメラ付きARメガネ(注2)で介護関連情報を表示し音声で読み上げるハンズフリー介護作業支援システムを開発しました。本システムを使うことにより、新規の入居者など職員がまだ詳細情報を把握しきれていない場合であっても、入居者の情報をその場で即時に提示できるため、声がけなどで適切な対応を取ることが可能となりました。
また実用化に向け、介護施設で実証実験を行いました。職員及び入居者に対して受容性評価を実施し、ハンズフリー型の情報提示方法に関し、介護の現場での作業に役立つことを確認しました。

 

実証実験概要:
 期間:2020年10月13日~12月18日
 場所:善光会サンタフェガーデンヒルズ(大田区東糀谷6-4-17)
 参加人数:職員6名、入居者20名

 

 

 

実証実験の様子

 

 

<今後の展望>
KDDI総合研究所と善光会は、介護現場で提供するサービスの質の向上や介護職員の負担の軽減、安全性・生産性の向上、さらには働き易い職場環境の実現を目指し、実用化に向けた取り組みを進めます。また、高齢化社会の課題解決につながる研究開発も進めていきます。

 

 

【株式会社KDDI総合研究所】
KDDI総合研究所は、KDDIグループのシンクタンク機能と研究開発機能を併せ持つ文理融合型の研究機関です。2020年8月、KDDI総合研究所はKDDIと共に、経済発展と社会的課題の解決を両立する持続可能な生活者中心の社会「Society 5.0」の実現を加速する、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定しました。これからもお客さまにワクワクするライフスタイルを提案すると共に、新たな価値と体験の提供や社会課題の解決に向けた取り組みを続けていきます。

 

【社会福祉法人善光会】
善光会は、東京都大田区を拠点に介護福祉施設を運営管理する社会福祉法人です。2009年のロボットスーツHALⓇ福祉用導入以来、130種類以上の機器を導入し、メーカー企業や関係省庁と連携しながら介護ロボットの共同開発・実証研究等、様々な先進的な取り組みを行ってきました。また、その知見を集約して福祉業界の関係者の皆様に効果的に活用していただくために、平成29年10月に 『サンタフェ総合研究所』を法人内に設立。各関係者の皆様へ向けた経営支援の実施の他、介護福祉事業者向け情報管理システム 『スマート介護プラットフォーム”Smart Care Operating Platform”(略称「SCOP」)』を開発し、複数の機器のインターフェースを統合する「SCOP Now」や介護記録アプリ「SCOP Home」のサービス提供をしております。今年度は厚生労働省「介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム」におけるリビングラボとしての指定も受け、行政と連携した介護ロボット開発環境の提供を開始しております。

 

 

(注1)善光会が開発した介護福祉事業者向け情報管理システム『スマート介護プラットフォーム"Smart Care Operating Platform"(SCOP)』のデータベースと連携。
(注2)Vuzix Bladeを利用
 ※ Vuzixは、Vuzix Corporationの商標です。

 

 

<別紙>

 

【本顔認識技術の特徴】
1)二段階での顔認識で顔の向きに寄らず認識精度を維持
2)認識精度を維持し軽量化(端末単体で動作可能)

 

1)二段階での顔認識
一般的な顔認識手法では、顔の向きを考慮しないため、必要な特徴量抽出には非効率
 → 顔の向きを判定し、その向きごとに顔認識を行うことで、有効な特徴量をより効率的に獲得し、顔の向きに寄らない認識精度を維持

 

 

 

 

2)認識精度を維持し軽量化を実現
・学習済みモデルの中間層特徴と軽量化アーキテクチャとの融合により、計算リソースを大幅に削減できる軽量的な再学習モデルを実現している
・AndroidTM上でNativeライブラリを提供し、1万人@1秒、100人@0.1秒での識別性能を達成(Galaxy S7 edge)

 

 

 

 

※「Android」 は Google LLC の商標です。
※「Galaxy」は、Samsung Electronics Co.,Ltd.の商標または登録商標です。

 

 

【音声合成技術の特徴】
1)IoT・組み込み向けマイコンボード単体で動作する軽量な日本語音声読み上げ技術
2)省メモリかつ軽量に動作可能
 ・HMM音声合成方式(注3)の採用と独自の軽量化技術
 ・MBSS技術(注4)により、低遅延での合成波形を出力可能

 

 

 

テキスト入力から音声合成ができるまでのイメージ

 

 

(注3)MBSS技術:マルチバンド正弦波合成技術(特許取得済み)
(注4)HMM音声合成方式:お手本となる音声(学習音声)の特徴を、統計的モデルの1つである、隠れマルコフモデル(HMM)により予めモデル化。そのモデルから学習音声の特徴を再現した音声を合成する方式。

 

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。