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“ゆずりあうクルマ”を実現するAI技術の開発に成功

2017年10月2日
株式会社KDDI総合研究所
国立大学法人北海道大学

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中島康之、以下「KDDI総合研究所」)と、国立大学法人北海道大学(北海道札幌市、総長:名和豊春、以下「北大」)大学院 情報科学研究科 調和系工学研究室(教授:川村秀憲)は、“ゆずりあうクルマ”を実現する人工知能(AI)技術の開発に成功しました。本技術により、現在、実用化が進められている自動運転技術で難しいとされている合流シーン等に対しても、他車両の行動を察知し、人間のあうんの呼吸のような“ゆずりあい”により、スムーズな自動運転を可能とします。今後、自動運転技術の実用化範囲が、高速道路から一般道へ、同一車線追随・車線変更から、合流、すれ違いへと広がりをみせていく中で、中心的な技術になりうるものと考えています。
本成果は、10月3日(火)~10月6日(金)に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される「CEATEC JAPAN 2017」のKDDIブース(ホール2、C104)に展示します。

 

 

 

 

【背景】
自動運転技術を取り入れた完全自動運転車は2020年ごろから普及が始まると言われています。自律的な運転が実現できることを主眼に開発が進められている一方、合流や追い越しといった、他車両との協調が不得意です。これを解決するため、深層学習(注)を使ったAIによる制御が注目されていますが、このような他車を配慮した制御が必要な運転シーンへ対応させる学習方式の確立が課題となっています。

 

【今回の成果】
例えば、合流シーンの運転制御は、減速、停止、周辺を確認しながらの発進、合流先の車両への追随などの制御要素によって実現されます。しかし、このような一連の制御要素をAIに学習させようとした場合、合流先車両への追随を改良すると、減速・停止の動作が劣化するといった過学習の現象が起こりえます。これは、AIが学習すべき運転シーンが体系的に整理されていないことが原因です。そこで、このような複雑な運転シーンにおける学習効率を高めるため、対象とする運転シーンの抽出と、他車との協調を含めた理想的な運転制御の要件定義を行うとともに(KDDI総合研究所)、行動の部品化(モジュール化)、モジュールごとの深層学習機能、並びにこれらのモジュールをつなぎ合わせるようなAI技術を開発しました(北大)。それらを実車の約12分の1のラジオコントロールカーに搭載し、合流時の複雑な動きを学習させることによって、このAI技術の有効性を確認しました。
合流以外にも自動運転が不得意とする運転シーンは多く存在します。今回の成果を応用することにより、今後、狭い道路でのすれ違い、直進優先の交差点での右折など、様々な運転シーンにおいて、“ゆずりあう”運転を実現していきます。

 

【今後】
KDDI総合研究所は今後、多数の車両から自動運転に必要なデータを選択的かつ効率的に収集する方法や、モジュール化により容易にアップデートが可能となったAIを、次世代のモバイル通信方式である5Gにより素早くアップデートする技術の研究開発を進めていきます。北大は、多数の車両から収集したデータを用いて行われる自動運転車両群を対象とした運転制御の学習手法の開発を進めると共に、安全で効率的な移動を実現するための車載AI間で取るべきコミュニケーションに関する研究を進めていきます。

 

(注)深層学習:多層のニューラルネットワークを用いた機械学習の手法の一つ。深層学習では、データが持つ特徴や規則性を自動的に学習するため、未知のデータに関する予測や分類が可能である。近年、計算機の能力が向上し、インターネットを通じて学習用訓練データが容易に取集できるようになったため、大量のデータに基づく学習が可能となり、学習精度が飛躍的に向上した。

 

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