株式会社KDDI総合研究所 このページを印刷する

~1000兆分の1以上の精度で識別を実現!~

世界初!加速度センサーの個体差により固有のIDを生成する技術を開発

2016年10月12日
株式会社KDDI総合研究所

株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中島 康之、以下「KDDI総合研究所」)は、ウエアラブル端末などに搭載されている加速度センサーの個体差により固有のIDを生成する技術(以下、本技術)を、世界で初めて(注1)開発しました。本技術は、加速度センサーを持つ端末にソフトウエアをインストールするだけで、1000兆分の1以上の精度(注2)を持つ端末固有のIDを生成することができます。また、将来的にはIoT端末の認証や決済ツールとしての利用拡大が期待されます。

 

【背景】

近年、ウエアラブル端末などインターネットに繋がる端末(IoT端末)の普及が進み、認証や決済に利用されることが増えています。安全な利用のためには、端末の識別が必要であり、携帯電話やスマートフォンにおいては、SIMカードやセキュリティチップなどのハードウエアを活用し、識別を行うことが一般的でした。IoT端末にはこれらのハードウエアが搭載されていないものも多く、専用の回路やメモリを用いて端末を識別する方式が検討されてきました。しかし、前者はコストや物理的大きさの制約により、後者は専用のドライバの導入負荷により、ウエアラブル端末など小型端末への搭載は困難でした。

 

【今回の成果】

本技術は、ウエアラブル端末などに搭載されている加速度センサーの最大値・最小値の個体差を利用し、複製が困難な端末固有のIDを生成するソフトウエア技術です。
加速度センサーの最大値・最小値から抽出した特徴量に対し、誤り訂正技術(注2)及び暗号技術による処理を施し端末固有のIDを生成します。KDDI総合研究所では、誤り訂正処理を最適化することで、高い一意性(注3)と頑健性(注4)を両立しました。

 

図1. 本技術の概念図

 

特徴
(1) 高い一意性と頑健性を実現した端末固有のIDを生成。加速度センサーを用いた場合は、1000兆分の1以上の精度の端末識別IDを生成可能。また、同一の端末でID生成を10,000回繰り返し、同一の端末識別IDが生成されること、高温(90℃)、低温(-18℃)、低気圧(高度2,000m)の環境下においても同一の端末識別IDが生成されることを確認。
(2) ソフトウエアのみで高速・軽量に実現。約10キロバイトのライブラリにより、端末識別IDを約50ミリ秒で生成。高速・軽量な処理のみで端末識別IDを生成でき、処理能力の制約が大きいIoT端末でも利用可能。
(3) 必要に応じてメモリ上で端末識別IDを生成し、鍵として利用。ストレージに鍵を残さない仕組みを実現。メモリ保護技術(注5)によりメモリ上のデータを保護することで高い安全性を確保。

 

【今後の活用例】

汎用OSを搭載するIoT端末においては、自由にアプリケーションをインストールして、端末に新しい機能を追加できます。このため、自宅や自動車の鍵、PCログインのためのトークン、入館カードなどを、ウエアラブル端末に集約することができます。たとえば、来客向けの入館カードを電子化し、有効期間をソフトウエアで管理することで、貸し出し・返却の手続が不用になります。安全なサービスを行うため、確実な端末識別が必要であり、本技術を活用できます。今後は実用化に向け、その他のセンサー・デバイスも活用した汎用的な方式を実現するとともに、端末識別IDの生成処理のさらなる効率化および安全性の向上を図ります。

図2: 今後の活用例

 

KDDI総合研究所は、政府推奨暗号「KCipher-2」(注7)の研究開発や、暗号解読コンテストにおける世界記録の達成(注8)など、暗号化技術で世界をリードしており、お客さまにより安心・安全な通信をご利用いただくため、今後も最先端の研究・開発に取り組んで参ります。

 

 

(注1)2016年10月12日 現在。KDDI総合研究所調べ。

(注2)同種類のセンサーから、1000兆個以上の異なるIDが生成できること。

(注3)データに誤りが発生した場合、その誤りが一定以内の割合であれば、訂正することができる技術。

(注4)異なる端末が同一の端末として判別されないこと。ユニーク性とも呼ばれる。

(注5)端末識別の結果が、周囲の環境(気温、湿度、気圧)やセンサーの経年劣化により左右されないこと。ロバスト性とも呼ばれる。

(注6)2015年9月30日プレスリリース「世界初!IoTのセキュリティ向上を実現する個人情報保護技術を実用化 
   ~IoTに実装可能なデータサイズと高速処理を両立~」
   https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2015/093001.html

(注7)2013年3月26日プレスリリース 「高速ストリーム暗号「KCipher-2」、電子政府推奨暗号に選定」
   https://www.kddi.com/corporate/news_release/2013/0326/

(注8)2016年7月19日プレスリリース「世界で誰にも解読されていない暗号問題を初めて解読!」
   https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2016/071901.html

 

 

※ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。 商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。